「竜の巣ってほんとにあるの?」と都会育ちのムスコに聞かれた。「うーん。あるかもしれないね」と、私。「みてみたいね。ちょっとこわいけど」
おじいさんの家を訪ねる途中、竜の巣の話を聞く、直人と研人も、電車の中では景色をみるよりマンガに読みふける都会の子たち。だけど、おじいさんの語り口に引き込まれ、時間と空間を越えて、子供時代のおじいさんと、竜の巣に迷い込んだ冒険の夜を体験することに。
大人の私には何かとても懐かしい感じを抱かせるハナシ。土の香りがする田舎、おじいさん、裏山の小道。私自身もそういうものを身近にして育ったからかもしれない。お話に登場する、人間の姿に変えられたカワズ、おでこに星のマークがついたかしこいコオロギ、竜など、一つ一つのキャラクターが面白く、やさしく、都会の暮らしから、私たちを懐かしい自然に戻してくれる。
もしそんなキモチがちびっ子にはわからないとしても、意地悪で乱暴な竜に立ち向かうための知恵を持つ大切さや、友達を守ろうとする勇気のことなんか、ちゃんと小学低学年でも読み取れる。語り口はあくまでやさしく、シンプル。なのにイメージたっぷり。ハラハラ、ドキドキのスリル感も侮れない。そしてかわいらしい挿絵の数々。
最終章で毎年夏、谷川で、竜から助けて友達になったかえるたちと水遊びをするおじいちゃんのハナシを読むころには、きっと子供たちも川遊びがしたくなっているはず!