【主要目次】1.小林・益川理論のノーベル賞受賞から何を学ぶべきか、2.消えた反粒子の謎に迫る、3.小林・益川理論の証明せよ!
第1部は立花氏の"まえがき"で、今回のノーベル賞のマスコミ報道のレベルの低さを嘆くとともに、ノーベル賞受賞の"陰の立役者"とも言うべきBファクトリーの意義を解説しています。小林・益川理論の肝である"CP非対称性"はこのBファクトリーの実験で実証されたのです。
第2部は「サイアス」誌(旧 「科学朝日」)の2000年4月号〜12月号の立花氏の連載の再録です。Bファクトリーのスケールの大きさと精緻さが伝わる記事です。正に「ワラの山の中から針を探しだす」ような実験です。日米のBファクトリー(日:KEKB v.s. 米:PEP-II)の熾烈な競争の様子も伝わってきます。小林先生・益川先生も少し登場します。サイアス休刊のため、最後が"尻切れトンボ"になっているのが残念です。
第3部は立花氏とKEKの高崎史彦所長・生出勝宣教授・岡田安弘教授・山内正則教授の対談で、今回のノーベル賞の意義、及び、サイアス連載以後のBファクトリーの進展が語られています。小林・益川理論が予測する"topクォーク"の発見と標準理論の検証を最大の目的として建設された加速器"トリスタン"(KEKBの前身)が、実験開始1年後にはtopクォークを見つけるには十分ではないことが分かり、そこからCP非対称性の検証へと"巻き返し"をはかった経緯は、まさに"
プロジェクトX"のようです。PEP-IIに追いつき追い越す経緯も読んでいて痛快でした。
「
クォーク」(南部陽一郎)や「
消えた反物質」(小林誠)の内容を把握できる読者なら本書は読めます(→易しくはありません)。"本"の構成・完成度としては同著者の「
精神と物質―分子生物学はどこまで生命の謎を解けるか」ほどではありません。(→ サイアス休刊が惜しまれます...)