立花が、持ち前のジャーナリストとしての取材力とバイタリティーで「知の最前線」を取材し、次々に本をものにする姿勢は良く知られたところだ。著者は、自らが京都大学に長く在職した経験と知識から、立花が知の最前線の現状をひとりよがりに解釈し、御都合主義的な論戦を展開し、読者にとんでもない誤解のタネを植え付けていると断言する。
たとえば、立花は遺伝子組み替え食品の危険性を、一般人が必要以上に恐れている点を指して、「その議論の水準のあまりの低さに驚くばかりである」、「遺伝子組み替え食品に何の心配もしていない。売ってたら平気で買う…」という。著者は、それこそがとんでもない知識不足だとする。遺伝子組み替え食品が、その原材料である植物を襲う害虫にのみ有害であるとの科学的確証は得られていないのが、科学者の認識であるという。また、宇宙論に関して、立花は「よく考えてみると、対称性の破れが世界を創ったと言うのは当たり前の話で、もし対称性が破れていなかったとしたら、この宇宙も登場してこなかったろうし…」と述べている。これに対して、よく考えてみても、対称性の破れが、なぜこの世界を創ったのかさっぱりわからない、という。
また、「現在の物質をつくっているフェルミ粒子のことが、彼(立花)の講義の中では一切触れられていない」と痛いところをつく。つまり立花の知ったかぶりは、文系の読者には通じても、ある程度理系の素養がある者にとっては、うわべの暴言に満ちているというのである。同様の無知蒙昧は、自然の摂理、生命の起源と進化、環境問題などに関しても列挙される。(澤田哲生)
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立花氏はここ数年、かなりのペースで本を出版してきた。ほとんどは過去の雑誌連載の再編集や大学の講義録だが、それでも、こんなにたくさん出して本の質を保てるのかという疑問はあった。自分自身、立花氏の最近の本の中にいくつかの誤りを見つけたが、この本が指摘するみたいにこんなに誤りがあるとは思わなかった。出版のペースを早めた代償として本の質を立花氏は落としてしまったという自分の予感が的中したという気持ちを本書を読んでかんじた。
しかし、本書を読んだあとでも立花氏の過去の功績は立派だと思っている。少なくとも専門外の一般の人に科学を広めたという点については多くの人が同意するだろうし、過去の本は最近のものよりもよくできていた。
遺伝子、脳死、インターネット、宇宙論といった世界に... 続きを読む
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