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『立喰師』はこの本の著者である映像作家、押井守氏が
出世作「うる星やつら」の頃から繰り返し繰り返し
その作品の中で、登場させてきた存在である。
氏の最終目標はもちろん映像化なのであろうが
とりあえず小説(?)という形で世に出されたのが本書である。
どこまでが事実かどうかわからない冗長な理屈と時代背景の説明、
どこまでもミニマル化していく局所描写の羅列、
まさに平成の奇書と呼ぶにふさわしい。
氏は氏の戦後史を再構築したいと述べているが
あまりの押井節の炸裂に
一読しただけでは妄想と饒舌の海に溺れて
とても戦後史を追うに至らなかった。
もう一度ゆっくりと読んでみるつもりである。
とりあえず読み始めてみると、押井調としか言いようがない硬い文体に抵抗を覚えますが。解決策をお教えしましょう。押井作品で難解な台詞をしゃべりまくるキャラをひとり思い浮かべ、その声を脳内で再生しながら読めばいいのです。押井作品といえばその代表たるメガネ(千葉繁)でもよし、『パトレイバー』の後藤隊長でも南雲隊長でも、『御先祖様万々歳!』の犬丸や犬麻呂でもいいです。堅苦しく思い文体も、様式の1つとしてすんなり(流して?)読めるはずです。
立ち喰いと押井は切っても切れない関係にあり、『パトレイバー』OVA第1期の「2課の一番長い」や『御先祖様万々歳!』の最終話でもそのゴトのさまを描いています(犬丸は本作にも登場する)。そう、本作は『御先祖様万々歳!』的な衒学と虚勢・虚妄に満ちた押井的世界という以外言いようのない世界です。
ただ、最初の蕎麦のあたりはいいものの、次第にトーンが下がって行き、実際ページ数にしても全然違うものになっています。あとがきにも少し仄めかされているが単に尻切れトンボというか、立ち喰い蕎麦以外には、やってみるとそれほど書くことがなかった、ということでしょうか。書き下ろしでは軌道修正も可能でしょうが、連載ものですし。
民俗学フィールドワーク調査の本のような体裁をとってはいますが、それにしても引用が多い。しかし、これらの引用は全て創作です(巻末の参考資料を見ればわかるし、読み進めて行くとなんとなく感じてくる)。書きたいものを書いたらこうなった、という感じの、微笑ましい失敗作(バカ本)。バカ本とは、褒め言葉ですので念のため。
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