先ずは個人的な心想ではあるけれど、私は日本の農業と中小零細の製造業等が“元気”になれば、この国の先行きは暗くない、と考えている。では、「金融」はどうか…というと、これはもう神谷秀樹さんの「主役である実業を営む方たちの事業構築を助けるのが金融本来の仕事」(
強欲資本主義 ウォール街の自爆)という言葉に尽きよう。それはともかく、たとえば、農業の世界では「
農協との30年戦争」を闘い抜き、「農業維新」を目指す農業生産法人・有限会社「新鮮組」代表の岡本重明さんの取組などが、この分野を“元気”にしてくれるかもしれない。
さて、本書は09年7月に刊行されているので、無理からぬところもあるのだけれど、留意すべき点が2つほどある。1点目が「「匠」の技を機械に置き換える」で例示している回転寿司を完全自動化した企業の話だが、この企業は現在、ある行為で一部批判を受けており、手放しでの賞賛はできないだろう。2点目は、著者が講演の際の資料で提示している自動車金型で有名な「オギハラ」であるが、当社は09年春、タイ資本に事実上買収され、さらに工場等が中国の自動車メーカーに切り売りされるなど、世界一といわれる金型技術に暗雲が漂っていることだ。
これらの点を度外視しても、「コイル及びコイル周辺技術の世界ナンバーワン」を目指し、「セルパップブラザーズ」というオヤジロックバンドで「中小零細Q.C.D.」という歌を歌う小林延行さんの、中小製造業の“心意気”や“サバイバルの知恵”に賛意を表したい。小林さんはコイルを中心とした「セルコ」という精密部品製造会社の代表取締役を務めているが、まさに上述の歌にある「だけど俺らにゃ技がある 誰にも負けないテクがある」「だけど俺らには夢がある 誰にも負けない意地がある」というフレーズのとおり、日本の製造業を「技」と「意地」で支えている。