ファム・ファタールは独占できない
女神を地上に降ろしてはいけない・・・
幾多の言葉を繰り出しても、語り尽くせない映画の一つ。
カトリーヌ(J・モロー)というファム・ファタールをめぐる、二人の男ジュール(オスカー・ウェルナー「華氏451」)とジムの三角関係と奇妙な同居生活が描かれる。
J・モローがヒロインを演じなければ、成立しない映画だったのかもしれない。
「彼女は美しくないけれども、女そのもの」
「嘘は焼いてしまう」
いくつもの台詞が輝いて、心を奪われる。
また、印象的なシーンが多くあり、カトリーヌが突然川に飛び込むシーン、男装してざっくりとしたセーターを身にまとい、口ひげを書いたカトリーヌの姿、自転車を走らせるシーン、カトリーヌの顔をジムが指でなぞるシーンなどが忘れられない。
第一次大戦前のパリから描かれ、モンパルナスの自由で退廃的な雰囲気が伝わり、戦後のシーンではJ・モローの衣装(モローの自前の衣装)が楽しい。
一人の男が独占するには手強すぎて、つかみどころのない奔放な女、カトリーヌ。
とらえどころのない女だからこそ、ジュールとジムはカトリーヌの魔力から逃れられない。
「どんな男といても満足したり安住できない女」は、つかまえてはいけない。
ただ崇めているだけの方が傷つかない。そうとはわかっていても、恋愛は理屈ではないから、人生は面白い。
皮肉なラスト・シーンには衝撃を受けた。