音楽のジャンルを問わず、心の深いところを揺さぶるような音楽と出会う楽しみは何物にも代えられません。藤原道山の『空-Ku-』もその一つで、どの曲もまさしく音楽ジャンルの分類という枠組みや範疇に納まることなく、悠久の時を越えて蒼穹に融け込むような広がりを感じさせます。
グレゴリアン・チャントの「タントゥム・エルゴ」などは、千住明の編曲も素晴らしいでしょうが、道山の尺八によってローマ・カトリックの修道院とZENの融合がもたらされたように感じました。リーフレットの冒頭に千住明が「人の祈りは無垢なものである」と書いていますが、洋の東西を越えて、文化をも超越して普遍的な「祈り」をリスナーにもたらしてくれました。それは「アメイジング・グレイス」にも「フォーレの『レクイエム』~ピエ・イエズ」にも「アヴェ・マリア」にも通ずるもので、ステキな音楽は全てを凌駕して伝播することでしょうし、世界中の人に聴いて欲しい音楽だという感想を持ちました。
一番のお気に入りは「ディープ・リヴァー」です。妹尾武のピアノと道山の尺八だけでこれだけ芳醇な香りに包まれるような演奏になるのは、千住明の編曲によるところも多いと思いますが、歌心に満ちた道山の思いが強く表出しているのもその要因でしょう。スピリチュアルズの代表曲ですが、日本の故郷を思い起こすような郷愁が音楽から漂っているのもまた不思議です。尺八の息吹が、その漢字の意味するところを明確に伝えているからこそ胸を打つのでしょう。
道山の演奏はヒーリング・ミュージックかもしれませんし、音楽ジャンルをクロスオーバーした演奏かもしれませんが、「祈り」というシンプルでピュアな思いは明確に伝わってきました。