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空間―機能から様相へ (岩波現代文庫)
 
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空間―機能から様相へ (岩波現代文庫) [文庫]

原 広司
5つ星のうち 4.5  レビューをすべて見る (2件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

商品の説明

第10回(1988年) サントリー学芸賞・芸術・文学部門受賞

内容(「BOOK」データベースより)

現代世界を支配してきた機能的な均質空間の支配に抗して、著者は新しい「場」の理論を構想する。工学的な知識はもとより、哲学、現象学、仏教学などの知見を駆使、長年にわたる集落調査の成果にも依拠して、著者は設計の現場から二十一世紀の建築は「様相」に向かうというテーゼを発信する。著名な建築家の手になる野心的な哲学的著作。

登録情報

  • 文庫: 329ページ
  • 出版社: 岩波書店 (2007/12/14)
  • ISBN-10: 4006001908
  • ISBN-13: 978-4006001902
  • 発売日: 2007/12/14
  • 商品の寸法: 15 x 10.8 x 2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.5  レビューをすべて見る (2件のカスタマーレビュー)
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10 人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By ikebow
形式:文庫
 文庫でこの本が読めることに感謝、岩波様のご配慮には尊敬します。最近では手に入り辛い建築書の一つだったし、中古で買うと高いしで、なかなか読み辛い一冊だった。

 原さんの建築を考える上で、内面から知るにはとっておきの一冊であることには間違いない。またそれ以上に、近代と現代を繋ぐ節目の本としての役割を重要視したい。
以前、以後の境においてどのようなことが注目され、現在では何が廃れ、何が残り、何が生まれたか?比較、発見する対象として非常に重宝されることだろう。
 しかし、建築以外の人間が読むに耐えるものかは個人的には謎。哲学が好きな人なら大丈夫か?

 まず均質空間に対する考え方は、ミシェル・フーコーの監獄の誕生を待たずして、すでに建築サイドの問題点から俗に文学サイドが言う近代空間の輪郭を描き出している。重要なのはそれを設計者である著者が解き明かしているところ=実践への転換をそこから行なおうとしていること。そして建築の言葉に哲学の言葉がやや翻訳されていること(原さんの言葉自身が哲学や数学などめんどくさい言葉に近いので建築のことば自身とは言い難いが)であると思う。建築サイドからの均質空間に対しては1956年にコーリン・ロウがシカゴフレームで、権力と空間との関係を薄らと紐解き始めている。本書はそれを上手く受け止めた上で身体的な次元にあった空間が、どのように制度やシステム、設備によって成立する空間へとシフトしていったかを書き綴っている。
 さらに言えばレムのビッグネスに通じる考え方やハーバードデザインスクールの黒本でのマーケットに関する考え方の基本はほぼ、この本の中で出そろっていると言っていいだろう。(ジャンクスペースはそれからさらに飛び出した射程を見ているように思うが)
われわれは本を読んだ上で均質空間をどのように扱っていくべきなのか?考える必要があるだろう。この空間は世界の歯車の一つになっており、進化を続けているのだから。

その後に続くの文章は、原さんが独自に均質空間に対して取った構えを文章にしたものとなる。

「<部分と全体の論理>についてのブリコラージュ」では、部分から成立するボトムアップ型のモデルに対しての考察が現れる。世界の民家調査や引用をもとに下部からの相互作用によって引き起こされる秩序にありようを探っていく。その中で出て来る「広場」に対する「空地」と呼ばれる空間がそれぞれのモノとモノとの媒体となっていく様の可能性を見ている。同じような話しは青木淳さんの「原っぱと遊園地」や古谷誠章さんの「広場」と「空き地」へと繋がっていっているように思う。

境界論では「空地」と周囲との関係に対して「谷」という考え方を導入する。自邸や京都駅などに見られる実空間での「谷」の展開以上に、<マイナスの中心>という「谷」に対しての評価は非常に重要なことだと思う。そして「谷」が持つ、動的な境界のイメージである。雨水が集まり、そして流れていく「力」の流れ。境界を物理学的に扱う可能性をそこには見て取れるだろう。それは当然、境界面へと移る。

本のタイトルとなっている「機能から様相へ」はヤマトインターナショナルを初めとする作品に見られる表層の表れを問うものとなっている。表層とは外と内が均衡する薄い面である。その薄い面の上で光と反射をもとに刻々と移り変わる姿を示す建築の姿は、まさに様相へと変わりゆく建築のありようを示していただろう。そして外と内の均衡は光に限らず、今日では様々なものへと適応され、建築は自然へと近づいている。と同時に、新たな自然を生み出そうとしている。

最終章「<非ず非ず>と日本の空間的伝統」では、「谷」において言われた「負」を「非ず」の論理として深めようとしている。

notAとは、Aの本来の場所にAが位置していない状態を指す。したがって、notとは事象を動かす力なのである。notAは当然ながら本来のA ではありえない。このnotの力は、否定の否定において明らかになる。not(notA)にみる否定の否定は、AをAが本来ある場所にもどす力であり、この力こそ運動の原因である。
p.284

<非ず非ず>の否定の力は、動かす力ではなく、可能なる場所の出現を誘起する力である。
p.285

たとえば、シミュレーションにおける条件文を思い起こしてもらえればいいだろう。条件に合うものはある安定状態に移行し、そこに留まることを可能とする。しかし条件から外れるものは常に次なる方向へと動いていく可能性を内に秘める。「谷」の空間とはそのような常に次なる状況へと移る可能性を秘めた「多」なる空間のことである。本文中では、そのような状態に対して「中道」ではなくて「無境」という言葉を当てているが、まさに平均的な状況ではなくある特異点にいるという事をしっかりと意識した表現であると言えるだろう。
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18 人中、13人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:文庫
 著者によると、『建築に何が可能か』(1967年)が〈関係〉の論であるのに対して、本書は〈様相〉の論であるとし、21世紀は「様相へ向かう」と言い切る。

 本書は、「均質空間論」(1975年)、「〈部分と全体の論理〉についてのプリコラージュ」(1980年)、「境界論」(1981年)、「機能から様相へ」(1986年)、「〈非ず非ず〉と日本の空間的伝統」(1986年)の5つの小論から構成される。

 「均質空間論」において、「近代建築が行ったことの総体は、ミースが座標を描き、コルビュジェがその座標のなかにさまざまな関数のグラフを描いたという図式によって説明される」と要約し、近代性については「人間を記述するにあたって、ものの全体性を記述することなく共通性を抽出する自然科学の記述法にとどまっている」と批判的に捉える。そして、そうした近代の均質空間から何とか抜け出したいと願う。

 「〈部分と全体の論理〉についてのプリコラージュ」では、「全体があってはじめて部分も記述できるという古典的な構え」を否定的に捉え、離散空間を提唱する。

 「離散空間とは、それぞれの点が意味ある部分集合であることを含めて、いかなる部分集合も意味あるとされるような空間である」

 「境界論」では、以下の書き出しで始まり、境界がはたす交換と媒介の役割を論じる。

 「はじめに、閉じた空間があった−と私は発想する。この閉じた空間に孔をうがつこと、それがすなわち生であり、即ち建築することである。」

 最も単純な建築を、屋根(ルーフ)/周壁(エンクロージャー)/床(フロア)という最も単純な要素に分解し、それを境界と解してさらに詳細に説明する。その内容を要約すると以下の通り。

 エンクロージャーとは「空間に容器性を与え、空間を個体化するための手段」であるとし、フロアの空間性は「その面上で出来事が生起することにある」と述べ、「生活の〈場〉を形成する母胎」であり、さらには「境界があいまいな事象を同時に発生させ、かつ、そこに構造的把握を可能にするような空間性をもっている」と指摘する。最後にルーフには「空間を象徴するはたらき」があり、「空間の容器としての性格と場としての性格とを同時にとらえようとするための概念的な装置である」と述べる。
 そして、これら境界にまつわる空間的概念は、実在する空間を構成する三つのプロトタイプ(部屋/庭/あずまや)に対応しているとまとめる。

 最後に、境界面が誘起する空間効果のもっとも面白い現象として、「空間の内と外との〈反転〉」を指摘する点は興味深い。

 「住居に入れば、ふつう家の中に入ったと感じる。それを外に出たと感じさせるように演出する。この反転した感覚が、さまざまな生活上の快適さのうえから、現代の住居にとって必要不可欠な条件である。」

 本書のタイトルにもなっている「機能から様相へ」においては、近代建築の「機能」に対する概念として、現代建築の「様相」を指摘しつつ、両者を対比的に検討する。

 近代建築:機能−身体−機械
 現代建築:様相−意識−エレクトロニクス装置

 様相(modality):事物の状態や空間の状態の見えがかり、外見、あらわれ、表情、記号、雰囲気、たたずまいなどと表記される現象。

 最終章の「〈非ず非ず〉と日本の空間的伝統」では、仏教の「空の思想」に言及しつつ、あらゆる文化の底流に見出せる多義性を保持する論理を〈非ず非ず〉の論理と考える。

 「機能論が立ち入ることができない全体的な雰囲気の世界」=「はたらきと関係ではなく、見えがかりであって、いわば様相の世界」の重要性を説き、その実践を日本の空間的伝統に見る。以下に様々な鍵語を用いつつ、日本の建築空間の特性を表現している箇所を抜粋する。

 〈境界がさだかでない〉という現象は、日本の空間、より範囲を狭くすれば日本の建築空間の特性である。

 〈場としての空間〉〈あると同時にないところの境界によって生成される空間〉

 「間」は切断の技術ではなく、異質なもの同質なものを問わず、融合や一体化の、境界をあってなきものにする様相論的計測技術である。

 近代の合理的思考に基づく「機能主義」を乗り越えるため、仏教の思想に基づく論理を採用する辺りは、黒川紀章氏の「共生の思想」にも共通する、西欧哲学に対抗する唯一の手段である?東洋思想の存在感を感じることができる。
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