デブの「おれ」こと湧井は、ハカセこと河本
しか部員のいない文芸部に入り浸っている。
湧井は日々、〈空色メモリ〉と名づけたUSBメモリに、他人
には決して読ませられない本音を交えた日記を綴っていた。
そんなある日、文芸部に、地味ながらも不思議な
雰囲気を持つ新入生・野村愛美が入部してくる。
ハカセは、野村に恋してしまうのだが、そもそも彼女は、
冴えない男子二人しかいない部活になぜ入部したのか?
やがて、野村の上履きや靴が盗まれる事件が起き、さらに、
人に読まれたら即破滅の空色メモリまでが盗難に遭い……。
自分が抱えるコンプレックスと折り合いをつけつつ、なんとか前向きに学校生活を
送っている湧井の等身大な語りがリアル(特に、悪気はないけどデリカシーもない
体育会系男とのやり取りなんかはよく描けています)。自虐的ではあるのですが、
ユーモアが適度に織り交ぜられているため陰鬱さはなく、むしろ爽快ですらあります。
また、ミステリとしての趣向も、きちんと用意されています。
本作のミステリ的な謎はどれもシンプルですが、丁寧な伏線
にもとづく小さなサプライズが、随所に用意されているのです。
そして、何といっても、リドルストーリー的幕切れが秀逸。
読者の中には、“結論”を知りたい向きもあるかもしれません
が、個人的には、本作の結末で、“正解”だったと思います。