橋本さんの今度の単行本は久々に十代男の子が主役の物語。
何をやらせても万能“天才”な兄に憧れ、敬い、時に憎み追いかけた“秀才”の弟─彰二─
彼が十八の時、唐突に消え失せた兄の背中。
そしてその夏休み、受験戦争の真っ最中何もかもを放り出し、59年製のキャデラックを無免許の両腕で転がし旅に出た彰二。
高速には乗らずひたすら国道を、神奈川から九州の西まで7日かけて行くその途中で拾った幾人かのヒッチハイカーを交えての道程が一人称で綴られるお話です。
合間合間に彰二の回想が差し込まれ、兄との思い出などが描かれます。
そして最後、着いた先で分かれる人生の命運、無くした行き先、代わりに得る自分だけの道…という感じでしょうか。
と言っても、最終地点で非日常的に何か大きな出来事があるわけではないんです。
それでも、たとえ日常に転がってるような他愛もないことであっても、当人にはとても大事なことだったり何かが変わるきっかけになったりするわけで…。
「強く胸打つ感動やむせび泣く程の悲しみ、飛び上がるまでの喜び、震えるくらいの怒りや憎しみ」そういった激情とは無縁だけれどじんわりと染み込んでくる。
そんなこの物語が好きです。