いずれも短編の6作品が収録されているが、いずれもその読後感は濃厚である。作者の確かな史眼と人間を見つめる眼が鋭く捉えた戦争期を生きた人々のドラマ。
それにしても、「夕霧」「初雪」の艦首切断事件や「友鶴」顛覆事件などにおける海軍の隠蔽揉み消し工作には(単純ながらやはり)怒りを覚える。
「小松艦長をはじめ士官たちは、西日に輝く「初雪」艦首部を見つめた。その内部には、生死はわからぬまでも二十四名の下士官、兵の体がとじこめられている。海軍にとっては、救出の見込みがなければ機密図書の処分が優先するのだ」(63〜64頁)。
なお、「最後の特攻機」を読んだのであれば、未読の方には併せて城山三郎氏の『指揮官たちの特攻 幸福は花びらのごとく』(新潮社)も読むことをお薦めしたい。