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空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む
 
 

空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む [単行本]

角幡 唯介
5つ星のうち 4.8  レビューをすべて見る (28件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

第8回(2010年) 開高健ノンフィクション賞受賞
第42回(2011年)大宅壮一ノンフィクション賞受賞

内容紹介

第8回開高健ノンフィクション賞受賞作!

チベットの奥地にツアンポー峡谷とよばれる世界最大の峡谷がある。この峡谷は一八世紀から「謎の川」と呼ばれ、長い間、探検家や登山家の挑戦の対象となってきた。チベットの母なる川であるツアンポー川は、ヒマラヤ山脈の峡谷地帯で姿を消した後いったいどこに流れるのか、昔はそれが分からなかった。その謎が解かれた後もツアンポー峡谷の奥地には巨大な滝があると噂され、その伝説に魅せられた多くの探検家が、この場所に足を運んだ。

早稲田大学探検部に所属していた私は大学四年生の時、たまたま手に取った一冊の本がきっかけでこの峡谷の存在を知った。そして一九二四年に英国のフランク・キングドン=ウオードによる探検以降、ツアンポー峡谷に残された地理的空白部の踏査が一向に進んでいないことを知った。キングドン=ウオードの探検はほとんど完璧に近く、彼の探検によりこの峡谷部に残された空白部はもはや五マイル、約八キロしかないといわれていた。しかし残されたこの五マイルに、ひょっとしたら幻とされた大滝が実在するかもしれない。キングドン=ウオードの残したこの「空白の五マイル」は、探検が探検であった時代の舞台が現代まで残されている、おそらく世界で最後の場所だった。私は空白の五マイルを含めたツアンポー峡谷の核心部をすべて探検しようと心に決め、一九九八年に部の仲間と一緒にツアンポー峡谷に向かった。

空白の五マイルを目指した探検家は私だけではなかった。とりわけ米国の探検家たちは一九九〇年代以降、精力的にツアンポー峡谷に足を運び成果をあげてきた。一九九八年には探検家イアン・ベイカーの隊が、ある大きな発見も成し遂げていた。米国の探検家に後れをとった私は二〇〇二年冬、もう一度ツアンポー峡谷を目指すことに決めた。米国の探検家も行けなかった空白部の最も奥地に入りこもうと思ったのだ。しかも今度は無許可、おまけに単独だった。この旅で私は何度か危うく死にそうな目にあったが、それでも執拗に峡谷の奥地に何度も足をのばし、伝説的未探検地とよばれた空白の五マイルのほとんどを踏査することに成功した。

それから七年が経った二〇〇九年冬、私は再びツアンポー峡谷を目指すことにした。まだやり残したことがある、そう思い、私は前年に新聞社を辞め、自らの人生を賭けた探検に出発した。しかし現地に入ると七年前には考えられなかったことが次々とおこり、旅はいささかスリリングなものとなった。

登録情報

  • 単行本: 296ページ
  • 出版社: 集英社 (2010/11/17)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 408781470X
  • ISBN-13: 978-4087814705
  • 発売日: 2010/11/17
  • 商品の寸法: 19.2 x 14 x 2.8 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.8  レビューをすべて見る (28件のカスタマーレビュー)
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43 人中、40人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 読むほどに,引き込んで行ってくれる, 2010/11/23
レビュー対象商品: 空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む (単行本)
チベットに端を発し,インド・アッサム地方を流れベンガル湾に注ぎ込むアジア有数の大河ツアンポー川。そのツアンポー川がヒマラヤを刻み,ツアンポー峡谷を作り出している。
私たちが想像するには,コロラド川が作り出したグランドキャニオンのスケールだけでも圧倒されるのだとは思うが,その大峡谷をはるかにしのぐ大きさのツアンポー峡谷には,まだ未踏の地があるという。未踏の五マイルの「探検」が,この文明社会に残された最後の秘境だった。

「探検」である。本書ではテレビや映画で見たことのある「探検」が描かれている。「探検」というと,現実の世界には既に成立しないイメージもあるが,本書ではとてもリアルな,それでいてスケールの大きい「探検」がなされている。
一瞬,「自己満足ではないか」とさえ思えてしまう今回の挑戦は,「著者の思い」だけでなく,19世紀から世界中の「探検」を行う人々の間(だけでなく国家をあげてまで)のかなわぬ挑戦の舞台であったことが,著者の筆によって紹介される。まるで,NHKのドキュメンタリーを見ているような,そんなリアルさは新聞記者時代につちかった筆力によるものなのかどうかは分からないが,読むほどに,引き込んで行ってくれる。
日本からの挑戦も著者が初めてではない。本書でも,武井氏の事故について多くのページが割かれているが,命をかけてまで探したかった,見たかったものがその場所にはあり,無いとされていたものが見つかり,そして著者に残されていたのは,空白の場所を自分で埋めることだった・・・

1度目の旅で,すでに十分に値するのではと思えてしまうが,第2部になると涙無しには読めない。
私の中では,今年を代表する本。
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23 人中、21人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 冒険者の業, 2011/1/5
By 
Lehman Packer (神奈川県) - レビューをすべて見る
(トップ500レビュアー)   
レビュー対象商品: 空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む (単行本)
 本書は2002〜2003年の一連の探検を第一部とし、2009年の探検を第二部として構成されている。

 角幡氏は早稲田大学の探検部の出身である。もはや探検に値する、人跡未踏の秘境など存在しないと疑いつつ、なおも探検への渇望を募らせていた。そんな時に出会ったのがツアンポー峡谷である。
 ツアンポー峡谷は全長500kmで最大深度6000mの世界一の大峡谷である。そのほとんどは1924年までに踏破されていたが、「空白の5マイル」と呼ばれる区間が未踏のまま残り、現代まで探検家を魅了し続けた。

 本書の構成は巧みである。角幡氏本人の物語の展開に合わせて、ツアンポー峡谷の探検史を差し込むことで、ど素人でも探検の凄みを実感でき、読み手の気持ちも高ぶってくる。
 特に角幡氏がツアンポー峡谷で死を覚悟した瞬間と、彼が九死に一生を得たことに気づいた瞬間の間に挿入された逸話「若きカヌーイストの死」は、大がかりなテレビ取材と一人の若者の死を描くことで、探検家にとってのツアンポーの魅力と困難さを良く表している。
 この若者は命懸けの冒険を通して、自らの人間性を高めようとした、大きな人間性を持った人物であった。
 彼の生き方は角幡氏にも大きな影響を与えた。

 最初の探検で「空白の5マイル」はほぼ制覇した。しかし数年経つと物足りなく思えてくる。「もっと逃げ場のない旅をしてみたい。」冒険者の業のような物が角幡氏を再びツアンポーに駆り立てる。そして二度目のツアンポーは前回より遙かに厳しい探検となった。現地の人々の協力は得られず旅程は延び、飢えて衰弱し、最後には生還する事自体が探検の目的となる。

 最初の探検だけでも、評者は出版する価値があると思う。しかし無惨な二度目の探検を含めたことで、理屈では理解できない冒険者の持つ深い業を感じ取れる作品になった。

 一度目の探検の直後に執筆されなかった事を幸運に思う。
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12 人中、11人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 東日本大震災を挟んで読んだ。, 2011/3/19
レビュー対象商品: 空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む (単行本)
読みはじめは、3月のはじめ。年度末の業務で忙しく、日常を離れすぎてしまっている本書とはなかなか向き合えない日が続いた。惹き込まれるのは、わかっていたのでゆっくりじっくりと読みたかったのだ。それほど、本書は最初の数ページで「これは、すごい本だ!」と思わせてくれる。ツアンポー峡谷!勉強不足で本書を読むまでまったく知らなかった。空白の5マイル、なんのことかもよくわからない。が、しかし、読み始めると目の前にはチベットの山々。不快で湿度高く腐臭のする峡谷の空気。切り立った断崖絶壁を轟々と音を立てて流れるツアンポー川の世界が広がってくる。 そうして2部を読もうとしているところで3、11のあの地震と津波に襲われた。地球のくしゃみのような出来事に、ちっぽけな人間はひとたまりもなく吹っ飛ばされた。戦国最大の犠牲者を出すことはもう決まった。 ひとの命を考えさせられた一週間。そして、ようやく本書を読んだ。津波で無くなる命と冒険で無くなる命、何が違うのかを考えた。考えた末に出た結論は同じだということ。人の命はどんな場合でも同じだ。優劣とか幸不幸を他が決めてはいけない。命はその人のものであるからだ。 この命について、他のレビューにもあるように、筆者が自分を深く見つめていく過程が素晴らしい。なんのために自分は生きているのか、という問いを筆者が自分ではなく、他に向けたときどんな本を書くのだろう。筆者がこの東日本大震災を書いたらどんな本になるのだろうと様々な思いを持ちつつページを閉じた。素晴らしい本と巡り会えたことに感謝している。
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