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43 人中、40人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
読むほどに,引き込んで行ってくれる,
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レビュー対象商品: 空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む (単行本)
チベットに端を発し,インド・アッサム地方を流れベンガル湾に注ぎ込むアジア有数の大河ツアンポー川。そのツアンポー川がヒマラヤを刻み,ツアンポー峡谷を作り出している。私たちが想像するには,コロラド川が作り出したグランドキャニオンのスケールだけでも圧倒されるのだとは思うが,その大峡谷をはるかにしのぐ大きさのツアンポー峡谷には,まだ未踏の地があるという。未踏の五マイルの「探検」が,この文明社会に残された最後の秘境だった。 「探検」である。本書ではテレビや映画で見たことのある「探検」が描かれている。「探検」というと,現実の世界には既に成立しないイメージもあるが,本書ではとてもリアルな,それでいてスケールの大きい「探検」がなされている。 一瞬,「自己満足ではないか」とさえ思えてしまう今回の挑戦は,「著者の思い」だけでなく,19世紀から世界中の「探検」を行う人々の間(だけでなく国家をあげてまで)のかなわぬ挑戦の舞台であったことが,著者の筆によって紹介される。まるで,NHKのドキュメンタリーを見ているような,そんなリアルさは新聞記者時代につちかった筆力によるものなのかどうかは分からないが,読むほどに,引き込んで行ってくれる。 日本からの挑戦も著者が初めてではない。本書でも,武井氏の事故について多くのページが割かれているが,命をかけてまで探したかった,見たかったものがその場所にはあり,無いとされていたものが見つかり,そして著者に残されていたのは,空白の場所を自分で埋めることだった・・・ 1度目の旅で,すでに十分に値するのではと思えてしまうが,第2部になると涙無しには読めない。 私の中では,今年を代表する本。
23 人中、21人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
冒険者の業,
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レビュー対象商品: 空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む (単行本)
本書は2002〜2003年の一連の探検を第一部とし、2009年の探検を第二部として構成されている。角幡氏は早稲田大学の探検部の出身である。もはや探検に値する、人跡未踏の秘境など存在しないと疑いつつ、なおも探検への渇望を募らせていた。そんな時に出会ったのがツアンポー峡谷である。 ツアンポー峡谷は全長500kmで最大深度6000mの世界一の大峡谷である。そのほとんどは1924年までに踏破されていたが、「空白の5マイル」と呼ばれる区間が未踏のまま残り、現代まで探検家を魅了し続けた。 本書の構成は巧みである。角幡氏本人の物語の展開に合わせて、ツアンポー峡谷の探検史を差し込むことで、ど素人でも探検の凄みを実感でき、読み手の気持ちも高ぶってくる。 特に角幡氏がツアンポー峡谷で死を覚悟した瞬間と、彼が九死に一生を得たことに気づいた瞬間の間に挿入された逸話「若きカヌーイストの死」は、大がかりなテレビ取材と一人の若者の死を描くことで、探検家にとってのツアンポーの魅力と困難さを良く表している。 この若者は命懸けの冒険を通して、自らの人間性を高めようとした、大きな人間性を持った人物であった。 彼の生き方は角幡氏にも大きな影響を与えた。 最初の探検で「空白の5マイル」はほぼ制覇した。しかし数年経つと物足りなく思えてくる。「もっと逃げ場のない旅をしてみたい。」冒険者の業のような物が角幡氏を再びツアンポーに駆り立てる。そして二度目のツアンポーは前回より遙かに厳しい探検となった。現地の人々の協力は得られず旅程は延び、飢えて衰弱し、最後には生還する事自体が探検の目的となる。 最初の探検だけでも、評者は出版する価値があると思う。しかし無惨な二度目の探検を含めたことで、理屈では理解できない冒険者の持つ深い業を感じ取れる作品になった。 一度目の探検の直後に執筆されなかった事を幸運に思う。
12 人中、11人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
東日本大震災を挟んで読んだ。,
By nori2m (岩手県) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む (単行本)
読みはじめは、3月のはじめ。年度末の業務で忙しく、日常を離れすぎてしまっている本書とはなかなか向き合えない日が続いた。惹き込まれるのは、わかっていたのでゆっくりじっくりと読みたかったのだ。それほど、本書は最初の数ページで「これは、すごい本だ!」と思わせてくれる。ツアンポー峡谷!勉強不足で本書を読むまでまったく知らなかった。空白の5マイル、なんのことかもよくわからない。が、しかし、読み始めると目の前にはチベットの山々。不快で湿度高く腐臭のする峡谷の空気。切り立った断崖絶壁を轟々と音を立てて流れるツアンポー川の世界が広がってくる。 そうして2部を読もうとしているところで3、11のあの地震と津波に襲われた。地球のくしゃみのような出来事に、ちっぽけな人間はひとたまりもなく吹っ飛ばされた。戦国最大の犠牲者を出すことはもう決まった。 ひとの命を考えさせられた一週間。そして、ようやく本書を読んだ。津波で無くなる命と冒険で無くなる命、何が違うのかを考えた。考えた末に出た結論は同じだということ。人の命はどんな場合でも同じだ。優劣とか幸不幸を他が決めてはいけない。命はその人のものであるからだ。 この命について、他のレビューにもあるように、筆者が自分を深く見つめていく過程が素晴らしい。なんのために自分は生きているのか、という問いを筆者が自分ではなく、他に向けたときどんな本を書くのだろう。筆者がこの東日本大震災を書いたらどんな本になるのだろうと様々な思いを持ちつつページを閉じた。素晴らしい本と巡り会えたことに感謝している。
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