本書の前に、同じ著者の手になる「日蓮」を読んで、その思想や行動がわかりやすく記されていることを評価しつつも少し物足りないものを感じていたが、この「空海」は万人にお薦めできる作品であり、刊行後、版を重ねていることからも読者諸氏の一定の評価を受けていることが伺える。
時代は奈良時代から平安時代への移行期であり、昔、日本史の教科書で習った歴史上の有名人物がこれでもかと登場する。桓武天皇、和気清麻呂、坂上田村麻呂、橘逸勢、藤原冬嗣、最澄、果ては蝦夷の英雄アテルイまで、多彩な人物群が空海の成長と活躍を彩る。同時に政治と仏教の関わりについても理解出来る。
密教思想へのイントロダクションとしても優れており、高野山や東寺、善通寺を訪問したい気持ちがとても高まっている私である。