映画「空気人形」は、“ダッチワイフが心を持つ”と言う極めてキワモノ的な題材を逆手に取った愛しみと切なさで彩られた儚くて残酷な大人の寓話にして、詩的でピュアなファンタジーの傑作だった。
そしてその世界観を見事に表現同化させたのが、W.E.Gによる今アルバム。
美しく透明感に溢れているが、同時に人工的幾何学的にも聴こえるメロディ、同一のフレーズを何度も繰り返す旋律は、主人公=空気人形の、まるで心を宿した事への躍動感と絶望的な孤独感を内在化しているような感覚を受ける。
シンプルだが美しく抒情的な音楽は、悦びも悲しみも含めた主人公の総てを優しく包容するかのようだが、映画に何らかの痛切な思いを感じた者なら、その余韻と残照感を想起させるに違いない。
ラストに収録されている「水の線路」では、本編でもペ・ドゥナによって朗読されていた吉野弘「命は」が聴ける。
ライナーノートで是枝裕和が語っているように、映画との深遠な共鳴を感じさせる幸福な1枚だ。