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収録作品のうちのいくつかは後に長編あるいはシリーズ化される手塚漫画の原型とみなせるものです。
例えば「わが谷は未知なりき」。アメリカ中西部のとある緑の谷に初老の父と若い息子・娘の三人が暮らしています。子供二人は生まれてこの方この土地を離れたことがなく、谷の外に広がる未知の世界に強い憧れを持っていました。ある日この谷に行き倒れの男が現れます。谷の外の世界からやって来た男はやがてこの一家に災いをもたらすことになります。
谷の底に暮らす一家の話は、「火の鳥 黎明編」の終盤に出てくるヒナクとグズリの家族の話と重なります。またこの一家の抱える「秘密」は「火の鳥 望郷編」に出てくる話と同じと考えて良いでしょう。
「The Encystment」」という物語は、「ブラック・ジャック」のピノコ誕生秘話と相似形のストーリーです。手塚治虫が<奇形のう腫>の物語をよほど気に入っていて、後にピノコに応用したということがよくわかる一編です。
「聖女懐妊」は宇宙の果ての名もなき惑星に一人研究のために派遣された男と女性型アンドロイドの恋物語です。このアンドロイドは「火の鳥 復活編」に登場する感情を持つロボット<ロビタ>の原型と考えて間違いないと思います。
表題作の「空気の底」に出てくる核戦争後の地球の風景は、「火の鳥 未来編」で主人公・山之辺マサトが独り取り残される核戦争後の地上の情景にそっくりです。
といった具合に手塚治虫のライフ・ワークへとつながる物語の萌芽が垣間見える、大変興味深い一冊です。
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