丸 2011年 01月号 [雑誌]
で、秋月型駆逐艦「初月」の、思いもよらぬ奮闘を知り、
情報を見直しておりましたところ、この本がまさにネタ本であったことに気づきました。
小沢おとり艦隊護衛艦であり、空母瑞鶴が沈んだ後、乗組員の救助に奮闘した駆逐艦初月。
しかし、そこに、米国重巡艦隊16隻が迫ります。
こちらは、軽巡五十鈴と駆逐艦が2隻のみ。
どうする!!!
ここで、初月は思いもよらない行動に出ます。
単艦、米国重巡艦隊16隻に突っ込んで行くのです。
その間、僚艦2隻は、戦場を離脱。
初月の運命やいかに…
ネタバレは避けますが、この戦い後、米国重巡艦隊司令デュボーズ少将は
「断腸の思い」という言葉を残しております。
この章のみでも、貴方が駆逐艦な方であれば、涙無くしては読めないでしょう。
そしてこの章は、旧版である
空母「瑞鶴」 (新戦史シリーズ)には載っていません。
しかし、この本の凄さは、徹底したリサーチと、生存者へのインタビューの積み重ねによって、
一つ空母瑞鶴のみならず、小沢おとり艦隊に何が起きたかを現在可能な限り、
肉声によって再現しようと試みたところでしょう。
そして、その試みは、淡々たる筆致とあわせ、素晴らしく成功しているように思えます。
戦争というものの無情感、その中で翻弄されていく者達の諦観、
そして、その中でも人として出来ることを最大限に行おうとする人々の姿、
勇者とかそういうことでなく、人が人としておかれた環境の中で精一杯誠実に生きようとするその姿、
それらが見事に描き出されている本です。
この本は、単なる戦史マニアのみに独占させておくにはあまりにも惜しい。
立場を問わず、可能なら全ての日本人に読んで貰いたい。本当にそう思います。