嗚呼、何と素晴らしい詩なのでしょうか「空想ルンバ」。
作詞をしたご本人は意識していないかも知れませんが、オーバーでも何でもなく、この詩には社会病理学と心理学のエッセンスが詰まっていて、さらにそこに大槻さんの悲しみを感じ取る繊細さと人間回復への想いがしみ込んでいるのです。
しかもそれは凡百の歌にあるような一元的で薄っぺらいものではなく、人間の心は「星や花が輝く」と同時に「獣がひそむ」混沌であることを受け入れた上で(どちらか片方しか扱っていない歌の何と多いことか!)、それでいて「食らいつけ」と叱咤する深奥なものなのです。
この曲を聴いて、わたくし、不覚にも少し泣いてしまいました。
「さまよいふらつきながら生きていて、端から見ればダンスに見える」と歌われた後、最後に「踊ろうよ、『本当の』ルンバ」。
目に涙がにじみました。「本当の」で、じわっときました。値札的評価重視の現代社会では「踊らされる」ことはあっても「微笑み軽やかに」「本当の」踊りを踊るということは実に難しいことです。一対一の恋愛にまで値札が付けられることが多い世の中です。
「人に値段があるなら、誰が決めるのか。僕も決めようか」ときて「君の価値さえも決めかねて、わからなくて…」。
嗚呼、この部分だけでも相手に求めることに終始する者たちに無限リピートで聞かせたい。
本当に素晴らしい詩です。
この曲やこの前に出た「人として軸がぶれている」、他の番組のテーマになった「踊る赤ちゃん人間」と、企画ものでは立て続けに素晴らしい詩の曲が続いています。筋少の次作でもこのような感動が味わえることを願ってやみません(筋少の復活作は前述の一連の企画ものに比べると、個人的に少し物足りなかったです)。
とにかく、大槻さんは現代最高の表現者の一人であり、未だその感性と表現力は衰えていない、ということが個人的に再確認できた素晴らしい作品でした。