著者によるこの本の紹介は以下の通り。
「この本は人物デッサンの本でもなければ、解剖学または遠近法などを教える為のものでもない。どうやって恐竜を描くかをステップ毎に説明しているわけでもない。結果的に幾つかの絵の具の使い方を説明しているが、特定の絵画スタイルを解説しているわけでもない。この本は長い期間著者がリアルな空想画を描く上で培ってきた方法論を凝縮したものである。」
本のタイトルからも分かる通り、この本はあなたの作品により一層のリアリズムと信頼性を付加してくれるものだ。各章で著者ジェームス・ガーニー(James Gurney)が彼の絵の制作時に学んだ知識を共有してくれる。内容は多岐に渡り人物、恐竜、建物、乗り物、構図、そして彼の作品ができていく行程(テクニックではない)を順を追って説明している。彼のアドバイスはここで挙げたモチーフ以外にもあてはまるだろう。
本文中で度々強調されているのが事前に行う調査の重要性について。彼が実際に行ったリサーチがそれを物語っている。彼がナショナルジオグラフィック誌の為に描いた難破船の絵の場合、彼は生き延びた船員達に実際にインタビューまでしているのだ。調査の中で出会ったドラマーの少年は遭難時ドラム機材を浮き輪がわりにして生き延びたという話があった。もちろん難破船の横にはドラムに掴まっている少年が描き込まれている。更に彼は苦しむ船員達のポーズを想像に頼らず実際に自分の体でやってみている。彼の描く他の絵にも言えることだが、そういった前準備が絵の中の物語により一層の説得力を持たせているのだ。
他にも面白かった話としては、彼が描こうとした恐竜用の消防車の話だ。本物の消防車デザインのプロ達にコンセプトを見せた結果返ってきた言葉は「格好はいいが、機能しないだろう」だった。恐竜の熱対策が不完全だったり、水を供給する為のホースの仕組み、冗長に複雑化したポンプのデザインなど問題がたくさんあった。それらのリサーチを汲み入れた改善版コンセプトは現実味が格段に増し、実際に存在してもおかしくないと思えるものに仕上がっている。
本作中には彼の作品や本文解説の為の写真がふんだんに収録されており、彼が参考用の小物をセッティングしている様子や、数々のスケッチ、主にナショナルジオグラフィック誌の為に描いた大量の絵などを見ることができる。時には彼の肩の上に乗っている鳥の写真があったり、鏡から作った没作品用焼却炉まであり見ていて飽きることがない。
『空想リアリズム ~架空世界を描く方法~』はとても勉強になり且つ楽しめる本だ。プロはもちろん美術学校生や自分の作品に深みを持たせレベルアップしたい人全員にお薦めだ。