本書で描かれるのは、奪取した近接信管の分析と対策、呼び出し符丁の分析によるエセックス級空母の配備確認、そして長距離ロケット兵器の開発という、華々しい正面決戦ではない裏方の、しかし重要な戦いである。
技術軽視の風潮、組織のセクショナリズム、暗号解読能力の低さや固定観念といった米軍以外の”敵”との紛れもない死闘を描いて緊迫感を持たせられるのは著者の筆力故であろう。
特にエセックス級空母の配備を突き止める過程は一級のミステリの謎解き過程のような知的興奮をもたらせてくれる。
それでもそういった後方から見える米軍は影しか見えない故により一層巨大で不気味な存在である。この相手にどう立ち向かっていくのか、続刊が楽しみでならない。
2年5ヶ月ぶりの新刊は、谷甲州という作家の相変わらずの持ち味を存分に引き出したファン垂涎の傑作である。