11 人中、10人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
予想を上回るほど出色の出来栄え, 2006/12/19
レビュー対象商品: 空中庭園 通常版 [DVD] (DVD)
団地に暮らす主婦・絵里子(小泉今日子)は「家族は隠し事をせず、何でもオープンに話しあう」というルールを作って家族を束ねてきた。夫婦のセックスの話題も、二人の子供に訊かれれば包み隠さず語って聞かせる。
しかし夫には二人も愛人がいる。娘は親に内緒で不登校。そして絵里子が家族に語ってきた生い立ちにも、実は嘘があった…。
小泉今日子の演技には鬼気迫るものがあります。絵里子が自らの過去を封印しようとする姿を、小泉は台詞まわしの微細な抑揚の差で演じわけるだけではありません。心の奥底にある張り詰めた思いと、それを家族に気取られまいとして無理矢理抑え込もうとする気持ち、この二つがないまぜとなり、小泉は緊張と弛緩が同居したような、いわく言いがたい面差しを幾度も浮かべるのです。その面容にはぞくぞくさせられます。こうした演技が出来る女優になった小泉に驚嘆の念を禁じえません。
物語展開も見事です。昨今、「家族は何でも話し合える仲であるべき」という<友達家族>神話が当たり前のように信じられているように思います。この映画はそうした根強い信仰に冷や水を浴びせることでしょう。明文化された家族のルールは、人間がどうしようもなく持っている出鱈目さ加減を、家族に許そうとしません。家族の構成員全員に無垢を強いる絵里子の家族観は、字面を見る限りはこの上なく理想的であるはずなのに、実際には彼女の家族に、そしてまたこの映画を観る者に、息苦しさを与えるばかりです。
娘のマナが父・貴史にママを愛しているかと尋ねる場面がありますが、貴史の返答がひとつの家族像を言い当てています。若かった時に描いた夢を捨ててまで今の仕事にしがみついて小さな団地の中で家族を支えるなんてのは、愛がなければ出来っこない、と。
家族の愛情は、互いに語り合うものではなく、静かに感じ取るものではないか。
そんなふうに諭された気分になる映画でした。
4 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
酔っ払いそうな「ブレる」映像が不安感を煽る作品。, 2009/12/19
レビュー対象商品: 空中庭園 通常版 [DVD] (DVD)
本作の映像は、冒頭から右に左に揺れる。大きな画面ほど酔っぱらってしまいそうだ(笑)。これは豊田監督のメッセージ作品なのだと思う。本作の公開を前にして覚せい剤違反で逮捕されてしまうが、その映像感覚はまさに「幻想を見ている」感じだ。原作こそあるが、実態はJ・レノンの「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイヤモンズ」と同じ。そう、あちら側の世界を垣間見れる作品なのだ。その映像世界に放り込まれた俳優たちも、不安感の煽り方がこれまた上手い。小泉今日子のアイドルっぽい微笑みと、一瞬の殺気だった顔の表現が出色であったが、板尾の怪しさやソニンの醸し出す「匂いそうな」イヤらしさも捨てがたい。また瑛太の眼光鋭い男の役は「チョイ役」に近いが、それでも釘づけにさせる魅力がある。永作も今宿麻美も、大御所・大楠道代まで、とにかく出てくる女優たちの好感度は「ゼロ」だ(笑)。こういう作品に挑んだ心意気にも拍手である。鈴木杏と勝地だけは普段のイメージを上手く出していたけれど。本作の舞台は「田舎の新興住宅地」という設定だが、ロケは横浜・港北ニュータウンで行われている。鈴木杏は「花とアリス」もここでロケしており、馴染みの深い女優だ(笑)。「田舎の百貨店なんて・・・」というセリフがあるが、その背後に大きく映る「モザイクモール」のロゴ。これって逆効果じゃなかろうか。ちなみに本物は阪急百貨店や専門店が入る「都市型」ショッピングモールである。あの観覧車も実在する。そんな街を血の色に染めた豊田監督の力量は凄いが、次回はぜひ「シラフ」で撮り上げてほしい(笑)。星4つ。
3 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
毒親持ちの人は考えるところがおおいかも, 2010/7/8
レビュー対象商品: 空中庭園 通常版 [DVD] (DVD)
「あなたなんか母親になるんじゃなかった。母親失格。」
「今度生まれ変わってきたらさ、私があなたの母親になってちゃんと育ててあげるから。だからもう死んで」
キョンキョンが肺がんの母親にふりしぼって告げる言葉です。
貧乏毒親持ちの自分にはキョンキョンがそう言ってくれてとてもスッキリしたシーンです。
ひきこもりでいじめられっ子だったのに、その過去は封印し
母親を反面教師として家庭を明るく照らす妻・母であろうとする彼女。
もう結婚して子供もいる私は自分を投影せずにいられません。
年老いた母にも貧乏だった母子家庭生活について思い出をかたるけど、どこか思い込みでねじまげられた記憶がある模様。
娘のキョンキョンにも愛されなかった思い出を強化する思い込みがあるから
自分と過去への否定にとらわれてしまう。
自分もそうなってないかなーと反省しました。
キョンキョンが怒るシーン、ひきこまれます。。
いつも微笑をたたえて暗い自分を封印しているひとが、咳が切ったように話し始めると迫力あるんです。
毒親って自分が切られそうになると猫なで声で電話してきたり、いままで言ったこともない「お誕生日おめでとう」を言ったりするので
あの電話をもらったくらいでキョンキョンが自分崩壊→再生へとすすむのはなんか乱暴な気がします。
でも全体的にはテンポが良くて2回、3回と繰り返して見ても時間がすぐ経過してしまうこの映画、大好きです。