1973年、アメリカに生まれたジュディ・バドニッツの23の短篇を収めた本書は、彼女がニューヨーク大学の創作科に在籍していた1998年に発表した処女短篇集。
ファンタジックなおとぎ話とでもいったたたずまいの世界が、この本の中に折り込まれ、道がいくつも分かれて行くように広がっている気がしました。ラファティの短篇集『九百人のお祖母さん』で読んだコミカルなホラ話に通じる雰囲気の話あり、星新一のショートショートの懐かしい肌触りを連想させる話あり、不思議に奇妙な味わいの話ありと、ヴァラエティに富んだ話の数々。訳者あとがきにあるように、≪この本を読むということは、たとえばラジオのつまみを回して飛び込んでくるいろいろな周波数の電波に耳を傾けるような、見知らぬ遊園地の乗り物に次から次に乗せられるような≫、そういう彩りの変化と奇想の楽しさを体験することができました。
なかでも、次の話がとても面白かったです。
◎娘が家に連れてきたボーイフレンドが、彼の故郷「イェルヴィル(絶叫町)」のことを、娘の両親にあれこれと話す。その話のとんでもなさに、食卓の雰囲気は一路、最悪に向かって突き進んで行く・・・・・・「イェルヴィル」
◎登場人物たちの別々の色をした物語が、ほんの束の間、同じ空間を共有しながら織り上げられてゆく・・・・・・「道案内」ならびに「電車」
また、いくつかあった赤ん坊をめぐる話も面白かったな。「産まれない世界」とか「ハーシェル」とかは格別。
訳文は、申し分なし。時々、作者と訳者がペアを組んでひとつの話を創ってんじゃないかと思ったくらい、息がぴったり合ってた(笑)