その昔神々の争いがあり、敗れた神とその眷属は勝利した神を信仰する人間に使役される、そんな異世界。
その神々を使役する王族の後継者候補として、かつて駆け落ちのため放逐された王女の娘が王都に呼び出される、というのが物語の端緒。
最初の数十頁、特にこれという事件もなく、淡々と進むのに、すでに傑作の予感。
後継者争いのなか、次第に明らかになる世界と主人公をめぐる真実、深まる謎、張られる伏線。
決して濃密な文体ではないのに、世界観の造り込みが見事です。
全く異質の世界なのに、読んでてわかりやすい。
神々は、むしろ妖精、妖怪の印象なんですが、やっぱり神なんですね。そこらの匙加減が絶妙。
クライマックスの盛り上がりも派手で、唐突感が否めない伏線の回収もありますが、よくぞまとめきったと。
続編もあるようですが、この一冊それ自体で満足度は高いです。
解説に、作者とジェンダー論との関わり云々の記述がありますが、本書に関してはそういう匂いはないので、食わず嫌いすることはないでしょう。
ヒロイックファンタシイだけがファンタシイではないということ。オススメです。