解説で書かれているように、清張が指弾しようとしたのが、
サッシンとの商談を進めた上杉でも、社長の河井でもなく、
社主「要造」だとすると大変興味深いことが浮かび上がる。
確かに清張ほどの人間が注目するに値するのは、単なる「サラリーマン」
「雇われ人」である旧安宅産業の幹部ではないことは確かだろう。
しかし、その対象が「希代のコレクター」である「安宅英一」であることに、
私は震えるほどの感情がわいた。
清張の書くべき素材としての対象に対する「察知力」「把握力」、そして「執念」は、
誤解を恐れず言えば、安宅英一と共通するところはないだろうか。
松本清張が追求し続けた「素材」と安宅英一が追い求めた「骨董品」は、
形こそ違え、両者が心の底に持ち続けた「ディモーニッシュ」、「魔」ともいうべき
ものではないかと考えてしまった。
人より抜きんでた事を成し遂げる人間は、常人とは違う所・・・欠けているもの・・・
「魔」を抱え込んで生きているように思える。