『空とぶじゅうたん』は、トルコやイランに残る言い伝えをもとに、新藤悦子さんのたぐい希な創造力で織り上げられた愛と幻想の物語です。
「糸は翼になって」(ヤージュベディル絨毯ートルコ)
「消えたシャフメーラン」(クルド絨毯)
「沙漠をおよぐ魚」(ムード絨毯ーイラン)
「ざくろの恋」(トルクメン絨毯ーイラン)
「イスリムのながい旅」(イスファハン絨毯ーイラン)
絨毯にまつわる5つの物語に、こみねゆら氏のすばらしいイラストが添えられています。
津田塾大学で中近東ゼミを終えた著者新藤悦子氏は、トルコに渡って現地に留まり絨毯を織り続けました。その日々を初の書き下ろしとして「エツコとハリメ」に綴りました。その後も中近東各地の旅を続け、「チャドルの下から見たホメニイの国」、「羊飼いの口笛が聴こえる」「トルコ風の旅」「イスタンブールの目」など自ら撮った写真を添え水際だったルポやエッセイを書いています。
「空とぶじゅうたん」は、実際にトルコに留まり絨毯を織り上げ、中近東各地を旅した作者だからこそ綴ることのできる渾身の物語です。言葉の一つ一つに作者の息遣いと中近東への愛が感じられる貴重な一冊だと思います。
中近東は今や、紛争の絶えない地域です。過酷な環境の中で絨毯を織り続けている女性たちに思いを馳せました。子供たちにも、大人の私たちにも、文化や芸術は人の痛みを通して、脈々と受け継がれていくものだということをさりげなく教えてくれるすばらしい物語絵本です。
物語もさることながら丹精をこめて描かれたイラストも十分に大人の鑑賞に値する作品です。児童書に分類するよりも大人向けの物語絵本と言った方がふさわしいかもしれません。手元に置いて繰り返し手にとってながめたくなる絵本です。