出来不出来の激しい短編集だ。なので作品ごとに☆を付けてみようと思う。
「穴らしきものに入る」
何の説明も無く、いきなりホースをくぐりぬけたかと思うと、蕎麦屋では同僚の口の中へ手から順番に身体を入れていく。穴を見るとどうしようもなく入りたくなってしまう男の話だ。文章も軽快だしギャぐ的な表現の入れ方も絶妙だし展開も早く非常に面白い。中でも電車のシーンは最高だった。ラストは正直もっと面白いオチは無かったのかと思うが、行き着く果てとしてはこんなものか。 ☆4.5
「金骨」
父親を火葬にしたら、骨が全部金だった。それに端を発し、盗もうとする者が続出。次にその弟である‘銀’造に注目が集まり……。ドタバタコメディで非常に楽しい。でもオチは残念な出来。 ☆3.5
「よだれが出そうなほどいい日陰」
日焼けを異常に嫌がるヤクルトンレディ(ヤクルトおばさんみたいなもの)の変態ぶりが生き生きと書かれていて不思議な魅力を持った話。だが、それ以上に展開が無いので飽きる。 ☆2
「エムエーエスケー」
顔にプロレスラーのようなマスクが突然張り付き、それを取ると別のマスクが現れ……と、顔がマスクのマトリョーシカ状態になる話。いろいろ話は繋がるし広がりは見せるが、結局それだけで終わってしまう話。 ☆1.5
「赤子が一本」
ジュースの自動販売機に「当たりが出れば……赤ちゃん一本プレゼント」と書いてあったという話。昔それを当てたというお婆さんが出てくるところまではまあ良かったが、その後の30ページは乱暴な言い方をすれば要らない。没原稿じゃないのか、これは。行ったりきたりで何度ジュースを買っても当らないだけ。だからといって心理的なドラマがあるわけでもない。非常に退屈で無駄な時間だった。結局最後に当たりが出て、ホラーな終わり方はしてくれるが、その前に腹が立っているので…… ☆0.5
ということで、最初の二作を読んでいた間は、筒井康隆の再来かと嬉しくなって、これは期待の新人だと読んでいたが、どんどんつまらなくなっていき、最後は印象が悪かった。最初の二作だけに¥552が高いか安いかだが、賞を取っている作品があるからまあいいかな、というところ。
一つだけ間違いないのは、ホラー小説が読みたい人は絶対買ってはいけないということ。僕の場合はホラーを期待して買って、それが違っていても読んでいて面白ければいいやと手を打っただけ。