農学者が最新科学を駆使して、稲の古代史の定説に挑戦する意欲作です。
主な論点は(1)縄文時代にも稲作はあった(2)弥生時代は縄文稲作と水田稲作が並存していた、というものです。
(1)については、プラントオパールに着目します。プラントオパールとは、イネの葉に備蓄された珪酸体の発掘物のことです。イネの葉は消滅しても、土中から珪酸体がみつかれば、イネの葉が存在したことが証明される。つまり、イネが栽培されていた可能性があるということになります。
ただ、縄文水田の遺跡がみつかっていないことから、縄文稲作は焼畑農業だったのではないかと推測します。そして、栽培されたのは、海上ルートにより渡来したした熱帯ジャポニカであったのではないかと推測します。もっとも、これらは、「最新科学により立証」したものではなく、「推測」の域を超えないようです。
(2)については、葉緑体のDNAに着目します。弥生時代の水田遺跡の炭化米の葉緑体DNAを調べてみると、少なからぬ割合で熱帯ジャポニカが混在していることが分かったというものです。ただ、水田で熱帯ジャポニカを栽培することは可能で、「水田には、その集約的な栽培にあう水稲を植えるほうがずっと合理的」というだけでは、根拠としてはやや希薄だと思われます。もちろん、著者は、それ以外の論拠を挙げて立証を試みています。
以上のほかにも、水稲の渡来経路について、SSRのタイプ分析から、朝鮮半島経由説も直接伝来説もどちらも正しかった、と指摘するなど、興味深い話が多く紹介されています。
科学者が語る古代史という、面白い視点からの歴史読み物だと思います。