ブラックバスが生態系を荒らしたために昔から伝わる漁業が振るわなくなっているとか,逃げ出したペットが野外で繁殖しているとかいう話題は,多くの人が一度はどこかで耳にしていると思う。最近はセアカゴケグモやカミツキガメといった危険な生物の侵入がニュースで広く伝えられた。
しかし,世の中では,外来種問題がどれだけ深刻な問題として認識されているだろうか。実際は,ほとんど専門家の間で騒いでいるに過ぎないのではないかと危惧する。海外からの観賞用・愛玩用の動植物の輸入は盛んだし,市場は町のペット屋さんからウェブサイトまで幅広く,利用者も多い。
街角,公園,空き地など,身近に外来種がすっかり溶け込んでしまっている現状では,一般の人々に問題の深刻さを伝えるのは案外難しいことだと思う。生き物の問題は自分が害を実感しないと,何とかしようという気にならないかもしれない。
本書には,外来種問題に関して,専門家が多角的に寄稿している。内容は,外来種侵入に対する対策から,外来種による実害まで多岐にわたる。一般層が読むには少し専門的過ぎるかな,という気はするが,世界でどんな対策を取っているのか,生態系にどんな変化が生じ,どんな害が発生しているか,といったことを知る端緒にはなるだろう。病気や寄生虫の拡大の危険性という観点は,一般の人にとっては新しいものかもしれない。