太平洋戦争において影ながら活躍し、滅びていった日本の情報機関。
その機関員達を養成し、各戦線に送り出していったのが本書のタイトルにもある陸軍中野学校だ。
本書は昭和46年から49年に番町書房より刊行された「陸軍中野学校」全6巻を底本として一部を抜粋し、再編集したものである。
多少資料としては古いものと思われるかもしれないが、旧日本軍の情報機関。
つまりスパイを取り扱った貴重な本であり、また情報戦においても敗北を喫した旧日本軍の実情を暴いた迫真のドキュメントである。
原本の著者である畠山清行氏の丹念な取材と、客観的な視点による描写はとても読みやすく理解しやすい。
本書は中野学校の工作活動は勿論として、その教育・訓練について詳しい描写があり、中野学校が現代の情報機関でも通用する先進的な工作員養成システムを作り上げていたことが伺える。
中野学校の教育精神の礎となった、日露戦争における明石元次郎大佐の活躍も収録してあり、日本のスパイ史を俯瞰する上でも欠かせない本である。
光人社NF文庫から出版されている「憲兵物語」でもあったように
工作活動においては信頼関係こそが非常に重要であるといった見解は、スパイに対して偏見を持っている人にとって大きな衝撃を受けるものではないだろうか。
謀略は「誠」である、という言葉は非常に重い。
ご一読あれ。