陳瞬臣の秘本(というか「ものがたり」)三国志もこの巻でいよいよクライマックスである。しかしながら、三国志の中で皆が期待するのは、やはり桃園の誓いを結んだ劉備・関羽・張飛そして何といっても諸葛亮の最期であろうかと思う。本巻はたしかに諸葛亮が死すところまでで、ものがたりは終るが、終始、魏・呉・蜀の動向を操作しているのは宗教である。これは、陳氏だからこそできる技で、実に巧みに扱われている。曹操はなぜ魏王となっても皇帝を廃嫡せず、曹丕にそれを委ねたのか、また呉の孫権はなかなかの我儘振りであるが、これも人口過疎化を恐れて蜀との友好条約を結ぶものの、魏には兵がいないことを悟られて軍を引っ込めるし、果ては海を越えて倭(日本と思われる)などに人狩りに出航するなど、話は史実に基づきながらも大胆な展開をみせる。そんな中を実は五斗米道の教母、少容が根回ししている。彼女は本来、死んでいるはずなのだが……。にもかかわらず、とにかくものがたりの鮮明な謎解き振りは読む者をすっかり納得させてしまう逸物である。諸葛亮の活躍になんと七縦七檎の孟獲との戦が八百長であったという話も面白い。ただ、ものがたり性が強いせいか、人物像の魅力を描き出している部分は薄い感じがする。先の5巻でも述べたが特に諸葛亮に関しては同氏著の「諸葛孔明 上・下」と「曹操」を読むべきと強く念を押しておきたい。