「私はこれから 鬼になりますから」−20年前、政情不安定な異国の地、デルナで起こった日本人集団拉致事件。拉致された22人のうち、10人は遺体で発見、残り12人については安否が不明なまま、死亡と断定され、捜査が打ち切られる。当時の中東アフリカ局長、千堂の決断によって。拉致事件によって一人娘を失った男、淡路は、末期癌に侵され、リミットを切られた今、現在は外務大臣となった千堂に復讐を決意する。誘拐されたのは、千堂の一人娘と、全く無関係に思われる一般の女性。二人のつながりは、そして淡路の復讐の真意はー。
連載で読んでいるので、単行本は今まで買っていなかったのですが、この話だけは通しで読みたくて、購入してしまいました。改めて読むと、本当にすごい、です。張りめぐらされた伏線、常に自分本位で唯我独尊な行動をとる千堂大臣、その彼の性格と行動を全て見越した上で、綿密に完璧な復讐を計画する淡路。子を思う親の心、それを奪われた苦しみ、非情な決断を下して間接的に我が子を殺した相手への尽きない憎しみ、全てに説得力があります。
そして通しで読むと、薪警視正の苦しみがより伝わってくる気がしました。かけがえのない親友や、多くの仲間を失いながら辿ってきた「第九」の道。MRIはあくまで犯罪を解決するためのもので、それが犯罪に利用されるものになってはならない。あるべき「第九」の姿を守るための薪の孤独な闘いは、つかの間、青木の存在によってのみ癒されていたが、雪子の存在が二人の関係を徐々に変えてゆくー。
長編の推理小説を読んだような読後感があります。現在のところ、間違いなくシリーズ中最高傑作だと思います。連載中の新章では新キャラクターも登場し、また大きく動きがあるようなので、今後にも期待大、です。