児童文学には、「純粋に子供を楽しませる為のもの」と、
「”子供向け”というタテマエで大人が楽しむ為のもの」がある。
平成の今読むことを考える場合、本書は後者に入るだろう。
昔は前者の役割も果たしていたのかもしれないが、今を生きるお子様に殊更薦めたい気はしない。大人向けである。
あらすじは、インド生まれの少女:メアリ・レノックスが、
イギリスのヨークシャーにあるおばの夫:クレイヴン氏(=義理のおじ)の家に引き取られ、
その家の禁忌とされていた花園にふとしたことから足を踏み入れて……というものである。
キャラクターは魅力的であったし、ややぶっきらぼうな文体で物語られるイギリスの田舎の情景も面白かったが、
構成上のバランスの悪さが気になった。
巻末解説でも少し触れられているが、途中までは主人公だったメアリが、
最後に近づくにつれて急速に存在感を失っていったのには違和感を禁じ得なかった。
彼女のいとこのコリンが登場してから、狂言回し的な役割になってしまったのが残念。
また終章の締め方も強引で、急ぎ足で、物足りない感じが残った。
なお、タイトルから誤解する方がおられるかもしれないが、この小説は耽美主義的少女小説ではない。
文体はややぶっきらぼうで、耽美主義に付き物の湿潤で薄暗くて生温かい雰囲気は一切ない。
気取ったような遠回しな表現も、終盤の一部を除いて一切見られない。
物語の締め方はイマイチであるものの、描き出されるヨークシャーの人々の表情はとても温かい。
個人的にはお屋敷の庭師:ベン・ウェザースタッフが良かった。