清水さんのSFには切ないものが多くて、涙させられることが多いのですが、今回は「2003」のZIPの平井少年への愛情とその幸福に、そして「2002」の天地さんの夢見ていたささやかな幸福に涙しました。事件そのものは凄惨なものも多く、人の醜さ、異常さをも感じさせる部分もあるのですが、そのそれぞれの思いの美しさにそうした部分は相殺され、いえむしろ人の思いの美しさ、切なさを感じさせられます。そして捜査といえ、そうした個人の秘密を暴き、その思いの重さを背負い続けて行くのであろう第九のメンバーのそれぞれの心にも思いが向かいます(何となく、以前読んだ死刑執行官の手記を思い出しました)。そうした思いの美しさ、切なさが清水さんの絵の美しさとあいまって強く訴えかけてくる作品です。
何十年か後には、この作品で描かれているように、人の記憶を見ることができるのかもしれません。けれども、そこには隠しておきたい思いも、そして誰かに知ってほしい、受け継いでほしい思いも複雑に入り交じっていて、それらがすべて白日のもとにさらされてしまうかもしれない可能性に考えさせられる思いです。誰かに知ってほしい、受け継いでほしい思いもその人だけの思いである以上、秘密にしておく方がいいのかもしれません。