一人の男の死を目の前にした懺悔から発見された、それぞれは全く無関係の
二つの死体。
一方の死体から暴かれる、あたかもループしたかのような、DVとそれに起因
する殺人事件。もう一方の死体から暴かれる、身内の誘拐殺人事件。
近未来を舞台にしながら、今起こっている問題を取り上げて、またそれを安
易なハッピーエンドではなく、冷静に悲劇として扱うことで、SFを交えなが
らの推理小説としての完成度を高め、読者層をも広げているのではないかと
思う。
ただ、個人的に残念なのは、三好先生の設定。「非常に有能な」という冠を
つけているのにも拘わらず、前巻では爪に生じた病変を見落とし、本巻では
刺し傷の角度などの観察ができていなかった。これは監察医として基本的な
部分であり、これができなければ「有能な」でなくても監察医として疑問が
ある。だから、青木に「他の誰を見ていても構わない」と言わせるだけの魅
力を感じないのだ。ということで、-★1つ。