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7 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
現在の学問に危機感を持ち,改革を志す人に薦めたい本,
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レビュー対象商品: 科学革命の構造 (単行本)
科学は,従来の学説に新しい学説が追加され,より完全なものに近づくという連続的な進化を遂げる学問であるかのように信じられてきました。これに対して,本書は,そのような考え方を覆し,科学は,科学革命を通じて進化すると主張するものです。すなわち,本書は,ある時代に支配的であった科学的なものの見方(従来のパラダイム)が,社会の変化や新しい発見によって現状を説明できなくなった場合に,新しい事態から生じた問題を,「簡潔に,要領よく,美しく」解決することのできる新しい見方(新しいパラダイム)が示されると,従来の考え方が根本から破壊され,それに代わって,新しいものの見方が支配するようになるというように,科学の進展は,パラダイムの転換(非連続的な革命)のプロセスを繰り返すことによって行われてきたことを示そうとするものです。 *** 本書の考え方は,政治体制の転換としての「革命」という人文・社会科学の用語を用いて自然科学の歴史を説明するものであるため,自然科学の分野だけでなく,あらゆる学問分野で,その妥当性をめぐる激しい論争が引き起こされました(論争の一部始終は,野家啓一『パラダイムとは何か−クーンの科学史革命−』講談社学術文庫(2008)で詳しく論じられています)。 ある分野のものの考え方,歴史観が論じられる場合,従来は,その分野の門外漢である哲学者や歴史学者によって論じられることが多かったと思います。哲学者でも,歴史学者でもなく,物理学を専攻する自然科学者自身が自然科学の新しい歴史観を示したところに,本書の第1の特色があります。 確かに,専門家が自分の専門について十分な認識を持っているとは限りません。しかし,専門家が,自らの学問分野の考え方について,自覚的に検討を始めた場合には,その検討の結果は,大きな重みと説得力を持つことを認めざるを得ません。 本書の考え方に対しては,哲学者を中心にして,さまざまな批判がなされ,現在もなされ続けています(267頁以下の「訳者あとがき」にも簡単な説明があります)。しかし,長い論争を経て,あらゆる分野の学術論文において,「パラダイムの転換」という用語法が普通に利用されるようになった理由は,本書の著者が,その学問分野で立派な業績を上げている専門家であり,かつ,専門外の学生に科学史の教育を行う経験を積んでいたことが大きな要因となっているように思われます。 *** 本書では,科学革命のプロセスが,「従来のパラダイムによっては説明ができない状態の出現」→「学問の危機に対する自覚」→「若い学者,または,新たにその分野に参入した学者による新しいパラダイムの発想」→「新しいパラダイムに対する少数の賛同者の出現」→「従来のパラダイムの信奉者からの攻撃と反論」→「若い学者の新しいパラダイムへの改宗」→「新しいパラダイムによる教育の開始」→「科学革命の実現」という図式によって,詳しく説明されています。 そして,本書の第2の,そして,最大の特色は,科学革命が実現された後に,どのような事態が生じるかについての以下の記述に表れていると思います。 *** 「科学の学生は,教科書の1章を読んでそれを完全に理解するが,しかし『巻末に付せられた多数の問題を解くには困難を感じる』とよく言う」(215頁)。 「このような困難も,普通同じようにして解消される。…たとえば,f=ma〔ニュートンの運動の第2法則〕やその他の記号的一般化のように,さまざまな状況の間の類似性を見出す能力は,『学生が例題とペンと鉛筆で,あるいは実験室の中で行なうことによって得られる』主なものであると私は思う。個人によってそれぞれ異なるが,一定数の問題を済ませた後で,彼は科学者として直面する状況を,彼の専門家グループの他のメンバーと同じゲシュタルトで見ることになる。彼にとっては,『教育を受けるはじめに出会った状況とはもはや同じ状況ではない』。その間に彼は,長期にわたってテスト済みで,そのグループの公認の〔ものの〕見方を身につけたのである」(215-216頁)。 「自然の知識は,ルールや法則よりも,むしろ類似的関係を学びながら得られ,それによって物理的状態の見方〔たとえば,ガリレオにおける斜面を転がる球の落下速度の発見,ホイヘンスにおける振子の振動速度の発見,ベルヌイの流体の流出速度の発見など〕を体得することができる。…このような学び方は,言葉の手段だけでは決して得られるものではない。むしろ言葉は,それがいかに機能するのかの『具体例』と共に与えられてのみ学ばれるのである」(217−218頁)。 *** 本書は,科学史に革命を起こすものとなりました。しかも,以上のように,科学革命の歴史から,科学革命を起こす方法を明らかにしている点に本書の第3の特色があります。 本書を読めば,科学革命は,一人でも起こすことが可能であり,科学革命を起こそうと思うのであれば,革命後に,新しいパラダイムがどのように教育されるかを念頭において戦略を立てる必要があることが理解できます。 もしも,現在の学問が危機的な状況にあると感じている人があれば,学問の変革は一人では何もできないとあきらめ,その状況を放置すべきではありません。愚痴をこぼしていても何も始まりません。何よりも,まず,現在の危機的な状況を打開するための新しいパラダイムの発見に努めるべきです。そして,そのような新しいパラダイムを発見したら,その賛同者を得るために,そのパラダイムに関する論文を執筆しつつ,新しいパラダイムが勝利を得たときの状況に思いをいたすべきです。 その時には,「すべての専門家が再び1つの今や全く異なったパラダイムの下に仕事を始め」(179頁)ていることでしょう。そのときに,必要とされるものは,次代を担う学生に,「例題とペンと鉛筆で,あるいは実験室の中で行なうこと」によって,新しいパラダイムを理解させるための適切な「例題を伴った教科書」の執筆でしょう。 *** 現在の学問に飽き足りない点を感じている人,現在の学問に対して危機感を感じている人は,本書を読めば,科学革命は不可能でないし,人任せにすべきではないことが解るでしょう。 本書を,現在の学問に不満を持ちながらも,改革に踏み出すことをためらっているすべての人に薦めたいと思います。
72 人中、55人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
パラダイム論の原点,
By セロリ (高知市) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 科学革命の構造 (単行本)
マルクスは、数学は、純粋な科学であり、社会的影響を受けないと考えていた。私もまた、この著作を読むまでは、自然科学は、社会的影響をほとんど受けることのない分野だと信じていた。しかし、ハーバード大での人文科学系の学生向けの講義を基礎としたこの著作を読んでからは、自然科学というものに対する感想が一変した。時代精神とでも呼ぶべき科学に対する世界観に基づいてのみ、初めて科学としての活動が可能だということが説明されているからである。その時代特有の科学者の世界観をパラダイムと呼び、そのほつれが目立ち始めると、やがて新しい世界観を再構築しようと試みる。これをパラダイムの変換と呼び、科学革命と呼んでいる。ほとんど、相対主義的歴史学と同じような内容である。しかし、その科学に対する世界観の分析結果は、トインビーの歴史学とよく似ている。科学革命の性格の類似性を強調しようとするあまり、その内容の発展という時間の感覚が無視されている。ニュートン革命も、アインシュタインの科学革命も、同じ性格を持っているという論理は、興味深いが、その発展の経過が分からなくなってしまっている。その点に問題が残るとしても、著者の目的は十分達成されている。もはや、古典なのである。パラダイムという言葉は、その本来の定義から離れて、社会科学にも影響を及ぼし、知らない人はいないという状態だからである。 高校生には、文章が難しいので、やや無理かもしれないが、具体例は、生きた人間の産みの苦しみを描いた興味深い内容なので、その部分だけでも、一読して欲しい。冷たい教科書の世界とは全く異なる、生き生きとした科学と科学者の世界が広がるだろう。
23 人中、17人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
科学史を学ぶ方の基本書!,
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レビュー対象商品: 科学革命の構造 (単行本)
歴史というのは文系の人たちが研究するものと思っていたのですが、大学に入ったら物理学科で 科学史という分野があり、専門に研究している人も いて、科学史という授業もあったんでちょっと感動して しまったのですが、その科学史の授業で最初に紹介 してもらったのがこの本でした。 科学だ、革命だなどというタイトルから、かなり 如何わしい似非啓蒙書のたぐいと勘違いされる方も 多いと思いますが、科学史の専門書の1つと いう位置付けで、かなり本格的なものと考えて いいと思います。 トーマス・クーンさんは近代科学史のパイオニアで、 哲学科の授業でもこの本を使っていると
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