「入門」書ということだが、背後に膨大な知識の体系があり、それを前提として書かれているので、難しいところもある。
著者は「本書の課題は、ごく理性的な姿勢から、これまでに幾分つちかってきた科学史の知識を動員し、現代の焦眉の問題である科学技術に対する基本的態度を模索し、確立すること」(p.221)と述べている。
古代ギリシャ時代の科学から現代の脳死、原子力発電所、環境問題まで科学と技術の歴史を駆け抜ける。登場する人物は、アルキメデス、アリストテレス、ユークリッド、ニュートン、デカルト、ベンサム、ガリレオ、ヒルベルト、マルクス、シュンペーター、アインシュタイン等々。科学論の先学の研究もベースにしている。ニーダム、クーン、ヴィーコ、ハーバーマス、ツィルゼル、等々。
多くを学んだが、共感できる叙述がいくつかあった。経済学への数学の適用が当初の思惑とは反対に、経済学の学問的内容を貧しいものにしてしまったとの指摘(p.7)、マルクスがソ連解体後、葬り去られつつあるが、誠実な再検討に値する内容をもっているとの指摘(p.119)、技術が社会的環境から自由でないとの指摘、随所にみられる科学の可謬性の指摘、技術制度化の「インフォームド・コンセント」、「環境社会主義」の提案などである。