古い話になりましたがいまから20年以上前、大学院2年め(M2)のときに、
就職かドクターコースか進路を迷っていました。結局、就職してしまった
のですが、当時、このような本に出会っていれば、自分の人生は大きく
変わっていたかも知れません。
当時、書評者がもっとも不安に思ったのは、研究者として生きていくためには、
自分の私生活(「楽しみ」と言い替えてもいいかもしれません)を研究のために
捧げなければならないということでした。そこまで没頭することにより始めて
科学者としていい研究ができる...自分にはそこまでの覚悟があるか?
また、博士課程に進んだ場合、本書ではバイオリン工房の例で説明されていますが、
指導教官と徒弟制度のような密な関係を持たねばならない...ちょっとそれは
勘弁してほしい。
結局、上記のような理由で就職を決意しました。本書によると、現在でもこの状況に
大きな変化はないようです。とすると、結論は変わらないじゃないか、ということに
なるのですが、アインシュタインから寺田寅彦まで、科学界のスーパースターの
エピソードを読んでいると、「研究者」として生きるという一生がすばらしく
思えてきてしまう。
会社では研究所という場所で多くの時間をすごしましたが、研究と言われるものの
実態は、単なる試験のようなものでした。それと引き換えに、アフターファイブは
無理としても、土日の休日はしっかり確保され、私生活の平穏は確保される。
幸せでいい人生だったと言いたいところですが、就職して20年を経た今でも、
本書を読むと、自分の中の科学者として資質が騒ぎ出す。もし、当時迷って
いた頃に本書を読んでいたら...
人生の岐路にいる若い人と、若い人を指導する立場の人に勧めます。
文句なしの★5つです。