科学とは縁遠い理数オンチがひょんなことから手にした一冊。覚悟を決めて最初のページを開いたところ、意外や意外、読みやすく、おもしろく、一気に最後まで読ませてもらった。話題が多岐にわたっていて、いかにも専門的すぎず深すぎずといったところが素人でも惹きつけられた理由か。
個人的には、ナイロンを発明したデュポン社の研究者カローザス(第1章)、論文投稿秘話(第6章)、科学ジャーナリズム(第9章)などが特に興味深く、最終章の研究者倫理は迫力ある内容だった。
その研究者倫理だが、日本の研究者の7割近くは企業にいるという。では、今の日本社会で彼らの倫理観を育て教育する場はどこにあるのか? 組織の枠の中にいれば組織の論理で考えなければならないし、企業体質や日本社会の体質を無視するわけにもいくまい。新たな危険性に直面したとき科学者としてどう行動すべきか、それは一人ひとりで考えてほしい、と本書は結んでいる。その一人ひとりとは、科学者だけでなく私たち一人ひとりのことなのだろう。科学者の倫理観を育てるのもまた、この社会全体なのだろうから。
最後に、第9章の「科学番組の目的は‘伝える’ではなく‘伝わる’にある」はまさに至言。ありがたく心に留めておく。