「サイエンス(アンド・テクノロジー)スタディーズ」なのか「サイエンス・テクノロジー・アンド・ソサイエティー」なのか、この新分野の名称はまだ不確定、というよりますます不確定になりつつあるようです。「科学技術社会論」という訳は後者のイメージなんでしょうね。
このテキストを一読して思ったのは、前者と後者は同一分野の異なった名称というよりも志向性そのものの相違をあらわしているのか?ということでした。前者の名称を冠した英文テキストはどれも「社会と科学の境界領域」に限らず科学者のコミュニティ内部や科学者の研究プロセスにまで目を向けるし、理論的問題意識を重視した構成になっているのに対して、この『科学技術社会論の技法』では境界領域の問題のみに注目し、科学政策論的志向性が前面に押し出されています。それは強調点の違い以上のことのように僕には思われました。
このテキストは「科学技術の引き起こす諸問題に我々はいかに対処すべきか」という問題をめぐる渾身の力作というべきですが、現代科学論の哲学的・社会理論的含意に興味のある僕には物足りなかったですね。でも二番煎じではないオリジナリティに日本の科学論者の底力を見た思い。続編を大いに期待!
中身は、水俣病、イタイイタイ病、もんじゅ事故など多くは日本国内で起きた科学と社会の境界領域事象を取り上げて分析するという内容。司法がらみの問題なため、どうしても法的にテクニカルな論点も多くならざるを得なくなりますが(というよりまさにその点こそが問題の核心であったりもするわけですが)知的刺激は十分に受けました。事象から汲み取るべき問題はこうである、みたいな押し付けがなく、読むひとごとの問題意識を育める書かれ方になっていると思います。