私は、アメリカの大学の大学院でPh.D. を取得する論文を書くときに、アドバイザー(指導教官)から、1本は「ネイチャー」に、1本は「サイエンス」に、1本は専門誌に投稿する様式で書いて、それらをまとめて自分の論文とするように言われた。教授の仕事は研究予算を獲得するために「グラント'プロポーザル」を書き上げ、提出する。アメリカの大学の科学研究費は、農学系ならUSDA、基礎科学ならNSF、医学系ならNIHと、それぞれ管轄する国の省庁が異なるが、ネイチャーとサイエンスに論文が掲載されることは、グラントを取り易くするに足る「インパクト」のある研究をしているという実証にもなっていると思う。私自身の論文は、ネイチャーとサイエンスに投稿したが残念ながら門前払いを食った。アドバイザーは、「ネイチャーとサイエンスに載るのは、ロシアンルーレットで当たるようなものさ」と笑っていた。もちろん、英語という壁はあるが、本書は、日本にいると「ネイチャー」と「サイエンス」がこんなに遠いのだろうと言う問いにストレートに答えてくれた。2誌の歴史的背景がわかり、視点を変えて2誌を読んでみたくなった。
私が大学時代は、物理学の竹内均先生が科学を一般の人に対してわかりやすく解説し、雑誌「ニュートン」を創刊した。現在では、福岡伸一先生や、本書の著者のように、しっかりした科学の啓蒙書を書いてくれる人がいることがうれしい。