従来の科学哲学(ポパーやクーン)では、低い地位にある「帰納法」が19世紀に確率論と出会い、自然科学における観測・統計処理へと結実していく過程を描き出すことで、既存の科学論の問題点を逆照射することを意図した力作です。
従って、従来の科学論の議論の進め方を期待する人には、面食らうような議論が続きます(論争的)。小林道夫氏の「科学哲学」も従来の科学哲学に批判的な立場をとりますが、オーソドックスな議論の進め方と思います(教科書的)。
ただし、「パスカルとメレ」の文脈から確率が語られる日本の学校教育を受けてきた人(私を含む)にとって、本書の議論は是非知っておくべきでしょう。
目から鱗であったのは、「条件付き確率」の取扱いについてです。高校で「条件付き確率」を学習したことがありますが、何のために使うのか全く理解出来ませんでした。それが、本書の指摘ですっきりと理解出来た点を感謝しています。
さらに、標準偏差に代表される統計処理は確率を「賭け」の文脈でなく「帰納法」の文脈で捉えないと、現代の「証券投資におけるリスク評価」等は理解出来ません(本書によって、当該理論を誤解していたことを痛感させられました)。
解析に代表される演繹論の体系に馴染んできた理系の高校3年生、教養課程に在籍する学部生に、確率統計を学習する前に読む本として、是非薦めたいのですが、いかんせん文章がわかりにくいのが欠点です。わかりにくいことを自慢しておられるような記述もあり、失礼ながら入門書としては☆一個減とさせていただきます。