科学を一般の人にもわかりやすく、という本は『
科学の扉をノックする』のように色々あるが、
本書はそのような本とは少し違う。
まず著者は進化生物学、科学史の専門家であるが、大学は文科系に進み、後に科学の世界に進んだという文/理の垣根を超えたキャリアを持つ。
著者の対談の相手は、漫画家浦沢直樹、哲学者東浩紀、作家堀江敏幸、メディアアーティスト児玉幸子、作曲家吉松隆、言語学者黒田龍之助、滋賀県知事、新聞記者、等々といったユニークな面々。
誰もが科学について考えている。
そしてそれは「科学に何ができるのか」「科学で人間はどこまで自然のことがわかるのか」という疑問に集中しがちだ。
だから「科学の最先端を一般の人にもわかりやすく」という特集が組まれ多くの人はそれを通じて科学を知る。
だが本書は常に「科学的方法」にこだわる。
科学的方法が、科学とは無縁と思われた職業にどのように資するのか。
それは科学を学べば体得するものではなく、多くのプロフェッショナルに自然と備わっているものだ。
漫画家にとってのイノベーションとは、作曲家にとってのプログラミングとは、言語学者にとって進化論とは、、、
刺激的な対談が続く。
ダムは有効だが万能ではない、予想以上のことが起きたら知りませんとは言えない、想定外のことにも備えるのが住民の命を預かる仕事だ、
という滋賀県知事の発言は、東日本大震災後、連日原発の「想定外であった」という報道を耳にする私達に多くの示唆を与えるだろう。