実用書として価値は高いと思う。
膨大な牌譜の統計分析に基づき、何が有利で何が不利な打ち方か、何を考慮すべきで何を考慮する必要がないか、極めて明確に述べられている。
初級者が中上級者に惨敗せず打てるようになるバイブルになることは間違いなく、中級者にとっても頭に入れておいて損はない内容となっている。
なお、実用書として読む場合、統計学に関する記載は一切無視してよい。
麻雀理論に対する影響も極めて大きいと思われる。
結論を提示するに至る過程にはやや稚拙かと思われるところもあり(筆者自身も認めているようである)、また本書の提示した結論に対しても賛否両論が起こるだろうが、少なくとも今後、牌譜に基づいた統計的な裏付けや検証可能性という点を無視した麻雀理論が説得力を持ち得なくなることは明らかである。
従ってこれからは、プロ雀士の面々が(ネット麻雀でなくリアル麻雀の)理論書を書く前提として、ネット麻雀だけでなく、プロ雀士の実際の対戦の完全採譜とデータベース化は行わざるをえなくなるだろう(既にやっているのか?)。
私がそれ以上に着目するのは、思想的なインパクトである。
筆者は、「流れ」や「ヒキ」なるものの存在は検証できず、そもそも定義が曖昧であるとし、これらに対して非常に否定的な態度を取っている(ただし筆者は、「流れ」の不存在を立証したとは主張していない)。
では、大多数の麻雀打ちが実戦で感じざるを得ない「流れ」「ヒキ」「ツキ」の正体は一体何なのか?
洗牌の限界による牌の偏りなのか、対戦者相互の心理作用か、それとも単なる思いこみなのか。
筆者が示した種々の統計的な結論が、その思索のための非常に貴重な材料となることは間違いない。