「秋葉原無差別殺傷事件」は、2008年(平成20年)6月8日に東京都千代田区外神田(秋葉原)で発生した通り魔事件。
7人が死亡、10人が負傷した。
実行者である加藤智大被告の生年月日は1982年9月28日。当時25歳であった。
このルポルタージュは、被告人より7歳年上である気鋭のライターによって記されている。
執筆態度には非常に好感が持てる。
「結論を導きだして普遍化してやろうという野心」がないのである。
著者独自のどうしてもか書きたかった私見は201ページの5行だけであろう。
そのため、本書は事実のみによって積み重なれて行く。
・金融機関に勤務する同士の夫婦の長男に生まれたこと
・母は被告を極端に支配する子育てをしたこと。
・母の期待に添い、進学校に進んだこと。
・母に口答えしても切ってもらえないので行動で示すようになったこと。
・高層の良心の期待むなしく北大には進めず、短大に進んだこと。
・不細工だから彼女ができないと信じきっていたこと。
・ネットの世界に安住の場所を見つけたこと。
・ささいなことに傷つき職をやめて転々としたこと。
・実は話せる友達は居た事。
これだけの情報があれば、ちょっとした想像の味付けをすれば、被告人の犯行に至る動機とその物語がつづれてしまうだろう。
「進学に熱心な母親の教育に従属して自分を抑えていたものの、一度の挫折ですべてを悲観、やっと見つけたネットという安住の場所にも拒否された男は……」
でも、これは間違っている。なぜならばベタで、分かりやすすぎるからである。精神分析学者などが陥りやすい間違いだ。
青森高校は進学校の範疇ではあるが、たいしたところではないし(マスコミは進学校卒業生の事件というと喜ぶから、そういう形容詞が使われるが)
ネットに没頭している時もオフ会を自ら計画するなど行動派であったのである。
きっと、著者は調べれば調べるほどこの事件を一般化して捉えるのは意味が無いと思ったのだろう。
心の闇はわからないが、読んだ人の心のなかには何かが生まれる。