岡田万茉莉子映画出演100本目を記念して自ら企画を立てた作品だけあって、まさにこれは岡田さんの代表作と言っていいでしょう。 あの数々の和服姿の艶やかさといったら言葉になりません。 また映画全盛期の撮影所の底力で、1カット1カットが絵画のよう(あの舞い散る桜の花びらは小道具なのでしょう)に綺麗に撮られています。 デジタルリマスターで蘇ったこの作品、ケースのカバーの美しさも含めてDVD商品のお手本のような品です。
他のレヴュアーの方が仰っている通り、“映画でもって映画以外のことを語る”吉田監督作品の中にあって、これは唯一の情緒てんめんたるラブストーリー。 しかし、戦争という極限状態でのみ真に生を実感でき、戦後の平凡な生活の中に意味を見出せない人々−というのはやはりちょっと観念的な話です。 私はこの映画、理解はできますが話的にはあまり好きではありません。 まったく個人的な好みを言って恐縮ですが、どうも主人公周吉のように、死ぬ死ぬと言って実際には死なない文学者くずれーというキャラがあまり好きではないのです。 もっとも長門宏之はそういうタイプの男を上手く演じていて、それはそれでいいのですが。 ラストのバス停での新子とのやりとりなど、真剣なような滑稽なような小ずるいようなーで、確かに人間とはそんなものだ、というリアリティがあります。 ある意味でこれは吉田喜重版“浮雲”でしょう。 ただこの映画のヒロインは“浮雲”のヒロイン以上の情念の炎をラストで見せてくれます。 “浮雲”系列の作品がお好きな方にとってはこれは必見の名作でお薦めできます。