上巻の最後で、連続放火事件は「情報操作で片がつく」と宣言した小鳩くん。
彼は本巻でその言葉を実証し、事件の真相を解明しますが、「情報操作」
という手段が用いられたところに、彼の大きな変化を窺うことができます。
一人だけ事件の「外部」に位置し、示された証拠のみに基づいて推理するという思考派の
名探偵だった小鳩くんが、
『夏期』を通過した本巻では、友人たちとの協力のもと、犯罪が
発生するプロセス自体に介入し、ある意味、犯罪を誘導するような行為をしているのです。
この変化が、(探偵)として進化なのか退化なのかはともかく、
小鳩くんの、人としての成長であることには違いないでしょう。
これを経ることで、彼は再び、小佐内さんと向き合うことができたのです。
ところで、辻真先氏も解説で書かれていますが、本作には(驚天
動地の大トリック、あっといわされるドンデン返し)はありません。
ただその代わり、(犯人〉や(探偵)にさんざんダシにされ、最終的には
コケにされた(被害者)の視点から本作を改めて捉え返すと、なんとも
ブラックで、底意地の悪い仕掛けを堪能することができます。