『事実は小説より奇なり』を地でゆく著者の大傑作。彼のファンからすれば、創作ではなくドキュメンタリーと言うことで、敬遠する向きもあろうが、なかなかどうして、こんな物語は小説では書けない。それだけ紆余曲折し、人間の欲と業をこれまでもかと見せられたら、一体何を信じて良いのやら。
圧巻は終盤の法廷での『証人』と『秋好』の質疑応答。生々しく人間の奥底を見せるに十分な展開は、忘れるなかれ、事実である。
物語の半分位までは『秋好』本人の生い立ちや周囲との関わりを事細かく描写しているが、これが重要なファクターになっているのは言うまでもない。そして、彼の生き様を知っているからこそ、我々読者は切なく、哀しく、最後には応援したくなるのだ。
勿論、事件の本質は『秋好』本人が持つ資質に起因していることが多く、これは弁解の余地もない。しかし、やっと目が覚めた自身を鼓舞して闘いを挑む姿は、共感を誘うだろう。そして、何度も繰り返すが、これは事実である。
日本の法事制度を見直すには十分な力作。オビの文句も大袈裟ではない事が分かるだろう。
実存する『証人』と関わる人達は、本書を読んだのだろうか?
本書を読まずして、『島田荘司』ファンとは言えない!!