バーグマンが母国スウェーデンの巨匠ベルイマンと組んだ遺作。
映画女優として、スウェーデン、アメリカ、イタリアで活躍した彼女が、
最後に母国で主演したというのは感慨深いものがある。
母(バーグマン)と娘(ウルマン)の緊張に満ちた愛憎関係が、さざなみの
ようなものから次第に激浪へと変化する様を描いている。
どこまでも静かで穏やかな語り口によって(画面の構図もスタティックで
、きわめてシンプルだ)、かえって饒舌に彼女たちの複雑で深い感情の高
まりを表現しているのは、さすがベルイマンである。彼女たちの語り(と
いうか対決というべきかもしれない)は、クロース・アップの切り返し
で描かれ、かすかな心理的動揺が顔の表情に出るのを逃さない。それは、
サスペンス映画のようにスリリングですらある。バーグマンが、眼の動
き、口もとのゆがみ…など、さりげない表情の変化だけで、心理的動揺、
感情的高まりを表現しているのが何と言っても素晴らしい。また、劇中、
バーグマンが娘と夫を捨て、別の男に走ったことを話すシーンは、いや
でも、「ロッセリーニ事件」を連想させ、彼女の実生活での懺悔を聞いて
いるような錯覚に陥り、胸が締め付けられる。
ベルイマンの盟友、スヴェン・ニクヴィストによる、文字通り「秋」を感じ
させる、柔らかい、しかし寂しい暖色を定着させた素晴らしい撮影も忘れ
てはならないだろう。