既に何年も前に単行本とか新潮文庫で出ていたのを知っていたら、もっと早くに読んでいただらう。今回、同じ著者の別の本が話題になっているので思わず衝動買いをしてしまったが、正解であった。なかなか興味深いインテリ「帰国子女」の悲喜こもごもな留学生活の一端を日本特有の小説形式である「私小説」という様式で書き綴っている。
留学生である一方で「東洋人」であり、「東洋人」であるということは「黒髪の」「黄色の」「有色人種」であるということである。ということは「黒人」と同種に扱われて仕様がないと思われていた当時の世相・時代背景がある。
だから現地の日本人は、アメリカ人に侮蔑されるのを「住友さん」とか「松下さん」とか「三井さん」のように日本人仲間で徒党を組むことによって緩和しようとしている。おかしなことに、著者を含めたそうした日本人「ムラ」の村民が、韓国人とか、中国人、さらには他のアジアの国の人間に対して軽蔑の目を向けている。現地のアメリカ人にしてみれば、同じ「有色」人として、十派一絡げに扱われているのに・・・・・。
美苗(Minae)とその姉・奈苗(Nanae)の英語交じりの日本語での会話が中心になって話は進む。英語で書き表されている部分と日本語で書き表されている部分の違いは、何か基準があるのだらうか、英語でなければ表現できないようなことなのか、外国暮らしの長い本人たちの拙い日本語でも会話に支障がない部分なのであろうか。英語の部分は、それほど難しいものではなく、そこそこ英語ができる人なら、辞書を引かなくても充分にその面白さが理解できる。
「私小説」であることには間違いがないが、本書は日米の文化人の意識の違いを青春時代を現地に暮らしたものでないと書けない瑞々しさに溢れ、読むものを引き付けて止まない。