名作「青春デンデケデケデケ」のオリジナル版。河出書房で刊行され、直木賞を受賞したのは、文藝賞応募のため約半分に短縮されたバージョンである。作者は授賞してくれた委員や読者を慮ってか、あえて「完璧版」という言葉は使ってない。ところがどっこい、恐らく後世に残るのはこちらであろう。確かにテンポの良さは劣るが、饒舌が徹底しているぶん魅力的なのだ。たとえば、三島敏夫というムード歌謡曲の歌手について二十頁も費やして語っている部分、本筋ともロックとも何の関係もない余談なのだが、この部分の面白さといったらどうだ。河出版では削られたエピソードもみな楽しい。特に主人公が年上のパートさんに誘惑されかかる話のおかしさ、切なさ。ここだけでも、新たに「私家版」を買う値打ちがある。