親や世の中に対する不平不満を赤ちゃんに語らせるという形式で、生後から1歳半までの育児の問題の数々を平易な文章で解説している。自分が買ったのはなんと第54刷のもので、初版は1960年に出版されている。もう半世紀近くも前に書かれたものを今自分が読んでいるとは感激である。とてもユーモアあふれるエッセイで、楽しく読めた。
世に氾濫する育児書に対しては著者はかなり懐疑的なようだが、「標準」とか「常識」という言葉に振り回されずに、自分にとって必要で有益な知識だけを獲得できるというのも親の大切な資質であると思う。情報洪水が著しい分野についてはなおさらである。
子供への愛情過多は、子供に「他を愛することの喜びを失わせて」(23頁)しまうという著者の意見には賛成。他を愛することの喜びを知らないということは、他の痛み・悩みがわからないということである。愛されたいと思って他人の注意を引こうとする必要がなくなれば、誰も相手を理解しようとは思わなくなるだろう。そんなことをしなくてもすでに過剰な愛情を受けているのだから。
赤ちゃんだって十人十色だ。ありきたりにかわいがればいいとは限らないし、突き放してばかりいてもいいというわけではない。「人間そのものを見よ!多様性を認めよ!」これは大人だけではなく、赤ん坊にも当てはまることなんですよ、というのが本書の最大のメッセージだと自分は思っている。